私自身の不勉強によるものですが、この防空法の存在を知ったのは小泉内閣の防衛庁長官在任中に有事法制と国民保護法制を手掛けた時が初めてで、それまでは全く知りませんでした。この国は一貫して国民軽視の国なのかもしれません。戦後の日本は違うのだ、との反論もありそうですが、ドイツやイタリアと違い、よきにつけ悪しきにつけ、実は国家体制として戦前と戦後が相当に連続していることをよく認識すべきなのだと思います。

来年度予算において賃金引き上げのための予算措置が講ぜられることになり、予算審議において議論されることとなりますが、賃金引き上げは日本経済にとって必要であっても、それは本来経営者と労働者の協議によって決せられるべきものであると思っています。憲法によって労働者に基本的人権の一環として争議権や団結権が保障されているのはこのためですが、近年ストライキが行われた例はほとんどないようです。

ピーク時の1974年に比してストライキの件数は約160分の1の33件、参加者数に至っては約5000分の1の744人というのはどう理解すべきなのでしょう。労使協調の麗しい姿、と手放しでは評価出来ないように思うのは私だけなのでしょうか。

権利を行使しない、という点では近年の投票率の低下と通底するものがあるように思われてなりません。良い政治も、労働者の正当な待遇も、権利を有する者がこれを正当に行使して満足に得られるものであり、我々政治に携わる者や経営者はこの上ない誠意と緊張感を持ってこれに応える義務を有するのだと思っております。

派閥の解散が続いています。派閥から資金とポストを切り離し、純粋な政策研究グループに移行するのは望ましいことですが、今までの各派閥の合従連衡が果たして政策によって行われたのかは甚だ疑問です。

かつての水月会は政策研究に重きを置く集団でありたいと願っていましたが、私の不徳や努力不足によるところも大きく、求心力を維持することが困難でした。今後新しく生まれるであろうグループが政策を研究・錬磨し、国家国民のために有為な存在となることを期待しています。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2024年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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