水平飛行している航空機の機首を上げ、約45度まで上がった状態でエンジンを停止し、その後、放物線を描くように機体を自由落下させることで、機内を一時的に微小重力状態にすることができます。
これを受けて研究者たちは次のような悪魔的な発想を思いつきます。
「微小重力環境のように上下の区別がつかない状態でネコを落下させると、着地能力はどうなるのだろうか?」
そしてアメリカ空軍航空宇宙医学研究所(USAFSAM)はこの実験を実際にやってみることにしました。
1947年に米オハイオ州の上空で行われた実験映像がこちらです。
(※ 動画はこちら。音量に注意してご視聴ください)
ナレーションの説明によると、ネコたちは微小重力の中で確かに上下の方向感覚を失っているようだったと述べられています。
しかし微小重力でもネコのしなやかさを完全に奪うには至りませんでした。
ネコは方向感覚を失っているように見えましたが、それでも自分がゆっくりとどの方向に落ちていくのかは理解しており、通常の重力下と同じように身を反転させて着地していたのです。
この実験を見た方は「これが一体何の役に立つのが?」「ただネコがかわいそうなだけじゃないか」とお思いでしょう。
しかし意外にも、この実験結果はのちの宇宙飛行士の訓練に役立つことになるのです。
宇宙飛行士は「ネコ着地」を訓練させられる?
この最初の実験に続き、1957年には8匹の子猫を対象に放物線飛行を行った実験も報告されました(Journal of Aviation Medicine, 1957:PDF)。
ここで研究者は「この実験は私たち自身の好奇心を満たすためだけでなく、微小重力状態におけるネコの耳石器官(平衡感覚に関わる末梢器官)の役割を明らかにするためでもある」と説明しています。
また1958年にも米軍の戦闘機「F-94 スターファイア」に乗せられて微小重力を体験しているネコの何とも居心地悪そうな写真も公開されました。