モドリッチは出しゃばるタイプではなく、むしろ控えめな性格だ。しかし人一倍気持ちが強く負けず嫌いだ。その類まれな人間力にカリスマが宿り、チームをまとめあげる。

モドリッチが表立ってキャプテンシーを発揮するようになったのは、レアル・マドリードで黄金時代を築いたジネディーヌ・ジダン監督(2016-2021)に懇願されてからのことだ。2019年に初めてマドリードのアームバンドを巻くことになった。

チームを率いるというよりは、包み込むといったほうが正しいかもしれない。その人格がプレーメイクの能力とあいまり、チームになくてはならない貴重な存在になっている。

トッテナムから加入したウェールズ代表FWガレス・ベイル(2023年引退)が長きに渡りマドリード(2013-2022)で活躍できたのも、ピッチ内外でのモドリッチのお膳立てによるところが大きい。

とりわけマドリードのような世界中からスーパースターをかき集めたようなチームでは、一つ間違えば個性がぶつかり合い空中分解しかねない。しかし、モドリッチという偉大な人間を前にしたら、どんなビッグプレーヤーも初心にかえるのである。

モドリッチにとって言葉は、さして重要ではない。自らの背中と風格でチームを導くのだ。心に深い闇をかかえるモドリッチは、白く美しい光を放つロス・ガラクティコス(銀河系軍団、レアル・マドリードの愛称)をつなぎとめるだけの計り知れない引力を生み出している。

モドリッチのプレーは、生き様やそこから醸し出される人間力がにじみ出ている。選手の人となりや内面を感じ取れると、同じサッカーの試合でも、また違った風に見えてくることだろう。