黒坂岳央です。
日本の学校現場で教師不足が起きており、志望者が減少している。この事実は多くの人に知られるところとなった。文部科学省の調査結果でも、全国の公立学校で教師が不足していることが示されており、その理由として「教育現場はブラック企業化している」という指摘も寄せられている。
そして恐るべき状況は実はアメリカでも起きていた。New York TimesのリリースしたYouTube動画を見れば、その惨状を知ることができる。
今、アメリカの教育現場で何が起きているのか?原因は何か?我が国がこの状況から学ぶことができることは?「日本の学校はあらゆる面で遅れて問題を抱えている。とにかく海外に学べ」という画一的批判者に冷水を浴びせるような、恐るべき状況は今、米国で静かに広がりつつある。
ブラック企業化する教育現場動画の中ではおぞましい惨事の証言者たちが取り上げられていた。中には涙ながらに訴える人物もいる。ここでそのあらましを取り上げたい。
全米全土で、教育関係者が集団で退職が続いているという。退職はどこの組織でも起こり得るが、問題はその欠員が補充されないままという点にある。残った人員は自己犠牲的努力を強いられ、子供の対応、テストの採点、仕事をこなすことが余儀なくされている。副校長は庭仕事をし、スクールカウンセラーは昼食当番を努め、教師は床掃除をやる。否、やらざるを得ないといった表現が正しい。
学校は懸命に欠員補充に翻弄するも、その空いた穴を埋める人員は見つからないままだ。眠れず、食事もままならないままに1日13時間働き、次の仕事を見つけられないまま退職を決めた教師もいた。その様子はさながら、身を粉にして働くブラック企業のようだ。
また、これほど労働集約的かつ長時間労働を強いられている中で、給与は低くとどまっている。10年前から10%も収入は下がるケースも取り上げられた。ミズーリ州は初任給の最低額を38000ドルに引き上げられたが、それは一時的なものにすぎず、またすぐ25000ドルに戻るだろうと同番組で分析する。
この価格帯は昨今、インフレに苦しむ米国において生存可能性を脅かす水準と言えるだろう。教師たちは「生きるため」に外部の仕事を掛け持ちし、アイスクリーム屋、食料のデリバリー、家庭教師、ウーバーイーツに励む。当然、誰もが疲労困憊している。
そこへやってきたのがCOVID-19襲来だ。このことで事態は更に悪化した。学校では子どもたちの教育ニーズより、危機の回避こそが最優先となり、教師たちはスクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、そして看護師の役割を求められた。1日に何件もの自殺相談役を余儀なくされるケースもあったという。