観光立国を目指す3つのデメリット

その一方で、観光産業は他のビジネスモデルには見られないデメリットも複数存在する。とりわけインパクトの大きいものを取り上げる。

1つ目はオーバーツーリズムである。たとえば京都では主要観光地へ向かうバスの運送能力を超えており、現地の通勤の足にも影響が出ている。また、一部のマナー違反をする観光客により、迷惑を被る店舗や宿泊施設も出ている。観光業では日本に住む日本人と訪日外国人とは物理的に棲み分けができないため、公共機関の混雑やゴミの問題は避けられない。

2つ目はインフレ圧力である。今や訪日外国人が増えすぎたために、一部の宿泊施設では4割、5割を超えるような値上げが敢行されている。それだけではない。需要の高いITガジェットや一部のエレクトロニクスは安い日本で買って海外で転売するという国際転売が広がっている。ターゲットの1つがiPhoneだ。過去にはアップル日本法人が東京国税局から消費税の追徴課税を受けている。たった1人で数百台のiPhoneを購入するなど、免税の要件を満たさない販売が認められた格好だ。ホテルや観光地はすでに値上げが著しく、一般商品にもその余波が広がりつつある。

3つ目は人手不足だ。メリットの部分に雇用創出と取り上げたが、これは見方を変えればデメリットにもなりえる。労働力過剰なら何も問題はないが、日本はこれから労働力不足が深刻化する。国力維持にはより付加価値の高い仕事に付く必要がある。昨今では地政学的リスクもあって、今後は日本が海外から半導体生産の受け手の一手を担う公算も大きい。そこへ人手が多く取られるのはさらなる人手不足を招きかねない。

だが、これは誰もが大卒、デスクワークを目指すという現況の是正が必要ともいえる。人手不足が深刻な産業がある一方で、事務職は人員過剰となっている。今後は「とりあえず大卒で事務職」は戦略としてマッチしない時代になる。むしろデスクワークより観光業への就職が有利になるだろう。

昨今のインバウンド需要の高まりについて、「日本は東南アジアと同じく、貧しい国として単に買われているだけ」といった悲観的な意見をよく見る。確かに課題も多い。だが、嘆くばかりで代案を考えないのでは無意味である。これだけ強力なニーズが有るなら、ビジネスチャンスも数多く眠っているはずだ。スキマ時間を持て余す人を国産アプリのライドシェアで活用するなどだ。より付加価値をつけて高くても喜ばれるサービスを開発すればいいし、外国人観光客にプラスアルファで課税、課金する仕組みがあれば売り手にとってもありがたい存在になる。この波をうまく捉えられるか?それが試される時が来ている。

 

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