民間企業でも、不祥事があるたびに内部調査が行われてきました。あまりにも身内に配慮した手ぬるい調査なので、最近では外部の専門家(弁護士、元検事、公認会計士など)で構成する第三者委員会の手に委ねるようになってきました。政治資金疑惑でも同様にすべきです。
政党に外部監査、調査の手を入れるようにすれば、少しは「大きな政治」に近づきます。民間の小悪には厳しく、政界の巨悪には甘い。検察が不起訴にした案件も第三者委員会の手で調べ直したらよい。
「派閥を解消し、政策集団に衣替えするのは、論点のすり替えだ」と、岸田首相は批判されています。衆参合わせて3百数十人を超す議員集団を自民党一つでまとめていくのは無理でしょう。政策集団への改組を論点のすり替えにならないようにしていくべきなのです。
政策集団にどのような機能を持たせるかの問題も、少しは「大きな政治」の次元に話になります。「これまでの派閥の会長は政策集団のトップにはならない」、「自民党総裁選には、各政策集団から自由に立候補し、政策論争を展開する」、「政策論争もないまま、派閥の会長クラスの密室の談合で数合わせするような総裁選はやめる」などが必要です。
麻生氏は「政策集団として、皆さんの期待に応えるように頑張っていく」と、27日発言しました。これこそ言葉のすり替えでしょう。麻生氏が政策集団の代表に座ってしまえば、人事権や資金源を握った従来の派閥となんら変わるところがありません。こうした人物は排除することです。
存続の意向である茂木派から、小渕優子氏(選挙対策委員長)が退会とのことです。新聞記事に「初の女性総理候補の小渕氏の退会に、茂木氏は『驚いた。残念だ』と漏らしたとあります。
メディアにはこれまでも小渕氏を「初の女性総理候補」と持ち上げてきました。本当に総理候補の有資格者なのですかね。誰かが言い出したことに飛びついているだけでしょう。政治部記者は可能性のあまりない話を不用意に何度も書かないことです。
「小さな政治」ダネを乱発しているのが政治ジャーナリズムです。元NHK記者の岩田明子氏は「森山派の解散は存続する2派閥に対し、世論の解散圧力を強める」と言ったとか。自民党担当が長かったのですから、「派閥解消を機に自民党政治の再生を目指せ」くらいのことを主張してほしい。
「政治とカネ」の話では、各議員にかかる政治資金の大きさがもっぱら問題になります。それより、選挙をやるたびに与野党から有権者向けのポピュリズム政策が飛び出してくる。何兆円という財政支出が新たに出ていく。こちらの金額の桁ははるかに大きい。
政治資金疑惑を追及する以上のエネルギーを注ぎ、「民主主義の政治的基盤である選挙のたびに、民主主義の経済的基盤がぜい弱にされていく」という問題提起がなぜもっとなされないのか。
これこそ「大きな政治」の問題なのです。テレビもワイドショーで、俗受けすることしか発言しないコメンテーターばかり並べるのではなく、もっと本質的は問題点を突ける論者を起用してほしい。
2024年世界各国で選挙が行われる「選挙イヤー」です。米国(11月)が最大の選挙で、そのほかロシア(3月)、韓国(4月)、ヨーロッパ議会(6月)などめじろ押しです。
「政治とカネ」の関係を正常化、透明化するのは当然として、その上に立って、日本は「大きな政治」を推進するための舞台をどう作るかの議論を政治ジャーナリズムに期待します。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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