2023年度税制改正で「グローバルミニマム課税」導入

 OECDではBEPS防止からさらに議論が進んだ。現在はどうなっているのか、結城氏が解説する。

「2024年4月以後に開始する会計年度から適用となることで大きな話題となっているのがPillar2(ピラー2:第2の柱)と呼ばれるグローバルミニマム課税です。これは、企業グループの国別の所得と税額から実効税率を計算し、グローバルに15%のミニマム税を課す仕組みです。それに合わせて各国の税制は、この4~5年で大きく変わってきています。例えば、アメリカでは『ギルティ(GILTI:国外軽課税無形資産所得合算課税制度)』と呼ばれる制度を2018年に導入。これは海外の軽課税所得に対しては原則課税するというものです。また、多国籍企業もレピュテーションリスク(風評ダメージによる損失)があるので、ここ数年くらいはどちらかというと、自主的に一定程度の納税をするようになってきているケースが見受けられます。多くの多国籍企業は新しく運用されるルールの状況を見てからでないと、タックスプランニングのしようもないということで、今は注視しているところと思います」

「第2の柱」があるなら「第1の柱」もあるわけで、これは多国籍企業が稼いだ利益(正確には課税権)をどうやって市場国に分配しようかというテーマで、同様に導入を目指して議論が継続している。OECDでは、2021年10月にグローバルミニマム課税の導入が決定された。正式には「GloBE(グローブ:Global Anti-Base Erosion Rules)ルール」と呼び、企業が最低限負担すべき法人税の割合を15%に定める仕組み。売上高などの収入金額が7.5億ユーロ(約1200億円)以上の多国籍企業に世界中どこでも15%以上の税負担を負わせる。子会社などが進出する各国で、その国における実効税率が15%を下回れば、親会社がある国で差分を支払う仕組みだ。日本では前述のように2024年度以降、段階的に導入されることになっている。

「何かイタチごっこがまた始まりつつあるのかなというふうに見ています。(BEPS防止には)限界があるので、しばらくするとさまざまな隙間というか落とし穴みたいなものが出てきて、それについてまた何か税制解析が始まるのかなと思っています。日本企業における現場感としては、グローバルミニマム課税は運用が大変な制度です」(結城氏)

 果たして、国家間の税率下げ競争に歯止めがかかるのか、そして、実質的な租税回避の流れは緩和されるのか。単にルールが複雑化しただけで終わるようなことがないよう注視していきたい。

(文=横山渉/ジャーナリスト、協力=デロイトトーマツグループ)

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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