■公園で目撃した「運命の瞬間」とは…

開発期限が目前に迫ったある休日。あきらめ切れずに実験を続けていた伊部氏は、重い気分を抱えたままランチで外出していた。

そして、研究開発センターの隣にある公園で、ゴムまりで無邪気に遊ぶ子供たちを眺めていたところ、頭の中に突如「まりの中の空間にモジュールが浮いている状態をつくる」という発想が浮かんだのだ。

このアイデアを実現させたのが、モジュールをいくつかの小さな点で支え、周囲にわずかな空間を設ける「中空構造」と呼ばれる設計である。

「頑丈」というイメージから、G-SHOCKを「固くて重たい時計」と考えていた人もいるのではないだろうか。しかし、G-SHOCKは衝撃に耐えうる「固さ」ではなく、衝撃を分散させる構造を有しているのだ。

「柳に風」「柔よく剛を制す」「押してダメなら引いてみろ」といった言葉を連想させる、非常に日本的な発想の転換と言えるだろう。