■開発で最も苦労したのは…
カシオが時計事業に参入した1970年代当時、腕時計は「落としてはいけないデリケートな精密機械」であった。しかし、そうした常識は1983年(昭和58年)発売の耐衝撃腕時計・G-SHOCKによって覆される。
開発のきっかけは、同社のエンジニア・伊部菊雄氏が「落としても壊れない丈夫な時計をつくりたい」と考えたこと。
開発の様子について、カシオは「研究開発センターの3階の窓から落下させる実験を繰り返しては、壊れ方を分析して構造設計を見直しました」「試行錯誤を重ねた結果、衝撃を和らげる柔らかい素材と硬い材質のフレームを組み合わせて、あらゆる方向からの衝撃を和らげる構造を完成させました」と、振り返っている。
しかし、腕時計の「心臓部」と言えるモジュールに衝撃が伝わり、壊れてしまう問題が残っていた。伊部氏は昼夜を惜しんで様々な対策を考えたが解決できず、なんとベッドの枕元にバラバラに壊れた時計の部品を置き、「夢の中で解決しようとした」こともあったという。
極限まで追い詰められ、正に絶体絶命にあったG-SHOCKの開発。しかしこの後、木から落ちたリンゴを見て「万有引力」を発見したニュートンのように、奇跡的な出会いが待ち受けていたのだった。