そして理解を深めるべき全身麻酔の分野の1つに、「麻酔薬に対する感受性の性差」があります。
例えば初期の研究では、「男性と女性は麻酔薬に対して同等の感受性がある」と報告されていました。
しかし、アメリカのウィスコンシン大学(Universities of Wisconsin)による2022年の研究では、「手術中に意識を戻す可能性は、男性と比べて女性の方が約3倍高い」と報告されており、議論の余地があります。
そこで今回、アメリカのペンシルベニア大学(Penn)に所属するアンジェイ・Z・ワシルチュク氏ら研究チームは、マウスと人間を対象に、麻酔薬の感受性に対する性差を調査することにしました。
女性は男性よりも麻酔から早く目覚める
最初の研究には、22~40歳の健康な成人30名(男性18名、女性12名)が参加しました。
彼らは3時間にわたり、全身麻酔に一般的に使用されている吸入麻酔薬「イソフルラン」を投与されました。
そして麻酔中は、脳波検査(EEG)により、脳活動が記録されました。
また麻酔後は、30秒ごとに聴覚への合図が再生され、聞こえた場合に手を握るよう指示されました。
さらに3時間にわたり、30分ごとの認知テストを受け、被験者の認知機能がどれだけ早く回復するか観察されました。
その結果、平均して、女性は男性よりも早く意識を取り戻すと分かりました。
女性は麻酔後29分で聴覚合図に従うことができましたが、男性は45分を要したのです。
同様に、認知テストにおける速度と正確さも、男性よりも女性の方が早く回復しました。
この結果は、最近の他の研究結果と一致しており、麻酔薬の感受性には性差があることを示しています。
では、この性差を生じさせているものは何でしょうか。