全身麻酔は、患者の意識を一時的に無くし、手術に伴う痛みを感じなくさせる医療技術です。
昔から多くの人が全身麻酔に助けられてきました。
しかし、全身麻酔が意識を失わせるメカニズムについては、現在でも完全に解明されたわけではなく、近年の研究により徐々に理解が進んでいます。
そして最近では、アメリカのペンシルベニア大学(UPenn)に所属するアンジェイ・Z・ワシルチュク氏ら研究チームにより、全身麻酔後、女性は男性よりも早く意識を取り戻し、認知の機能を回復させると判明しました。
この研究では、この性差を男性ホルモンの一種が生じさせることも分かっています。
研究の詳細は2024年1月8日付の学術誌『Neuroscience』に掲載されました。
目次
- 徐々に明らかになっている全身麻酔のメカニズム
- 女性は男性よりも麻酔から早く目覚める
- 男性ホルモン「テストステロン」が麻酔感受性の性差を生じさせる
徐々に明らかになっている全身麻酔のメカニズム
全身麻酔の歴史は19世紀に遡ります。
西洋で初めて全身麻酔による手術が行われたのは1846年のことでした。
それまで手術とは苦痛を伴う大変危険なものであり、その痛みとリスクの大きさから、緊急の場合にのみ行われることが多かったようです。
そのことを考えると、「気づいたら手術が終わっている」なんてことを可能にする現代の全身麻酔は、今やなくてはならない存在です。
しかし、よく知られていることですが、全身麻酔が最初に行われて180年近く経った現代でも、麻酔によって人が意識を失うメカニズムは完全には解明されていません。
もちろん、全く見当がついていないわけではなく、現在に至るまで1つ1つ証拠を集めるかのように、徐々に理解が深まってきています。
100年以上謎だった「全身麻酔で意識がなくなる原因」が特定される