さらにカニクイザルたちが遊びで使う石などと比較を行ったところ、オス・メスともに自慰に使う石は、数・大きさ・表面の粗さなどの変動幅が少なく、一定の数値に収束する傾向があることがわかりました。
この結果は、カニクイザルが自慰に使う石は、遊びに使う雑多な石に比べて「厳選」が行われ、特定の(好みの)形状のものが多用されていることを示します。
しかしカニクイザルは研究対象として比較的メジャーな動物であるのに、なぜこれまで石を使った自慰が報告されていなかったのでしょうか?
「大人のオモチャ」の起源は数百万年前まで遡るかもしれない
なぜカニクイザルたちの石を使った自慰が知られていなかったのか?
研究者たちによると、その原因の1つは環境にあるといいます。
ここでの研究対象となったカニクイザルたちは保護区で飼育されており、人間たちによって毎日十分なエサが提供されていました。
そのため、カニクイザルたちは本来ならばエサを探す時間と労苦があるはずですが、飼育環境のおかげでその苦労から解放されたお陰で、道具を使った自慰など生存に必要ないスキルを身に着けることができたのだろう、と研究者たちは結論しました。
人類は農耕を開始したことで得られた時間的余裕を文明発展や技術開発に使用し、それはやがて娯楽の追求へと発展していきましたが、カニクイザルたちはそれが自慰スキルの開発に向かったのかもしれません。
また自慰を行う目的も純粋に快楽のためである可能性が高いとのこと。
以前の研究では「霊長類のオスの自慰は質の低い古い精子を排除するのに役立つ可能性がある」との仮説が立てられていました。
しかし今回のカニクイザルのオスに見られる「石を使った自慰行為」は射精が伴っていませんでした。