百条委員会をめぐる風向きの変化

 斎藤知事への内部告発を調査する県議会調査特別委員会(百条委員会)をめぐる風向きの変化も影響しているといわれている。斎藤知事による県職員へのパワハラを訴える告発文書を受けて、県議会は6月に百条委員会を設置。翌7月には斎藤知事のパワハラや出張先などでの贈答品の受領などを告発していた県の西播磨県民局長(当時)が死亡。9月には県議会の各会派などが提出した斎藤知事の不信任決議案が全会一致で可決され、失職した。

 一方、百条委員会の進め方に対して疑問も広まっている。10月25日に行われた片山安孝前副知事への尋問では、片山氏が告発者である前出・元局長が公用パソコンに保管していたとされる私的情報について発言を行おうとし、奥谷謙一委員長が制して一時中断。この日の百条委員会は知事選への影響を考慮して秘密会の形態で行われ、今月22日に証人尋問の映像が公開されたのだが、映像では片山氏のこの時の証言の一部音声が消されている。また、奥谷委員長の「片山氏から不規則発言があり、尋問を行うことが不可能と判断した」との発言も収められている。

 今月には片山氏と奥谷委員長のやり取りを録音した音声がインターネット上に流出し、その内容から百条委員会の公平性や透明性を疑問視する声が相次ぐ事態に発展。たとえば、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏は百条委員会が隠蔽をしているなどと批判を展開している(奥谷委員長は立花氏に虚偽の内容を投稿され名誉を毀損されたとして警察に刑事告発)。

 百条委員会は、地方自治法100条に基づき地方議会が設置する特別委員会で、その目的は自治体の事務に関する疑惑や不祥事を調査することと定められている。今回問題となっている証人尋問の公開について明確な基準はなく、各議会の裁量に委ねられている。全国紙記者はいう。

「今回の百条委員会は県議会の自民党と立憲民主党の議員が設置を求める動議を提案して可決されたもので、前回(21年)の知事選で斎藤知事を推薦した維新の会と公明党は反対しました。奥谷委員長は自民党所属であり、兵庫県議会は議会の最大会派は自民党、知事は維新の斎藤氏というかたちで“ねじれ現象”にあり、議会と知事は対立的な関係だというのが前提にあります。本来は首長などのカネや公務に関する疑惑を調べる百条委員会が、パワハラ問題の解明を目的として設置されたことには、以前から適切なのかという疑問の声があったのは事実ですし、政治的な思惑が絡んでいる臭いもします。

 そして、テレビはこれまで百条委員会の進め方に乗っかって斎藤知事の疑惑を大きく取り上げてきましたが、さまざまなことが重なり、各局の情報番組の制作陣がいったん立ち止まって冷静になるべきだと慎重になり始めたことも、PR会社の問題の報道ストップの背景にはあるでしょう」