研究者たちは最初に、水素原子がパラジウムに入り込みその結晶構造が拡大する様子を観察しました。

するとこのとき、パラジウムの表面に小さな水の泡が形成される瞬間を確認することができたのです。

実際にその映像を見てみましょう。

画面左下にあるとおり、スケールバーは20nmになっています。

真ん中にある四角の物体がパラジウムです。

パラジウムナノキューブの表面に水の泡が現れ、どんどんと大きくなる様子が分かります。

この様子を詳細に調べることにより、反応が2段階で進行することが明らかになりました。

まず、水素原子がパラジウムの表面に侵入し(1)、結晶構造に挿入されることで金属表面が膨張します(2)。

次に、酸素が加えられると(3)、水素がパラジウムから出現し、酸素と結合して水を形成します(4)。

この過程でパラジウムは元の状態に戻ります。

パラジウムが水を生成する触媒として働く一連の過程。(4)まで反応が進行した後、状態は再び(1)に戻る。
パラジウムが水を生成する触媒として働く一連の過程。(4)まで反応が進行した後、状態は再び(1)に戻る。 / Credit:ナゾロジー編集部

これらのパラジウムの挙動はまさしく触媒の一連の働きを示しています。

そして同時に反応をする側、すなわち水の形成されるメカニズムを明らかにすることにも成功しているのです。

ここから研究者たちはさらにパラジウムの触媒反応の解明のため、条件を様々変えて反応の最適化を図りました。

最初に酸素を入れた場合、解離した酸素原子はパラジウムの表面全体を覆ってしまいます。

その後に水素を入れてもパラジウム表面に吸着できないため、水を生成する反応を引き起こすことができませんでした。

酸素原子はパラジウム表面に吸着するにはエネルギー的に有利ですが、原子が大きいために結晶構造に入り込むことが難しかったのです。

エネルギー的には有利であっても、原子の大きさが結晶構造に入り込むのを邪魔している。
エネルギー的には有利であっても、原子の大きさが結晶構造に入り込むのを邪魔している。 / Credit:ナゾロジー編集部

一方、水素原子は非常に小さいため、パラジウム原子の間に入り込み、結晶構造を膨張させられます。