今回の研究には、接種回数ごとに、観察期間の割合が記載されているので、中央値の推定が可能である。その結果、未接種、1回目、2回目、3回目、4回目、5回目接種済済みグループの観察期間の中央値は、25週、25週、23週、21週、10週、2週と推定した。
表3には、この推定中央値を用いて計算した接種回数ごとの死亡率を示す。未接種、1回目、2回目、3回目、4回目、5回目接種済みグループの死亡率は、0.057、0.051、0.042、0.026、0.033、0.0104%となり、5回目接種済みグループでは、未接種グループと比較してかえって死亡率は高くなった。
表4には情報不明者を0〜5回接種済みに振り分けた推定値を用いて、人年法で死亡率を計算した結果を示す。
未接種、1回目、2回目、3回目、4回目、5回目接種済みグループの死亡率は、0.084、0.060、0.045、0.028、0.035、0.114%であった。振り分けた推定値を用いない場合と同様に、5回目接種済みグループでは、未接種グループと比較してかえって死亡率は高くなった。
神奈川県の発表では、ワクチンを5回接種すると、未接種者と比較して死亡率が1/7に減少することが示されたが、観察期間の違いが考慮されていない。同じデータを用いて、観察期間を考慮した人年法を用いて死亡率を計算すると、結果は大きく異なっていた。
最近発表された基礎研究、臨床研究は、ワクチンの追加接種することで、かえって感染しやすくなることを示している。ワクチンの追加接種を推奨する拠り所は、重症化予防効果によって死亡率を下げる効果があるということであるが、今回の結果は、そのような主張に疑問を投げかけるものである。
ワクチンの追加接種は、世界の中でも日本が先頭を走っており、5回目接種の意義については、日本から情報を発信することが期待される。
昨年9月からコロナ患者の発生届が簡素化され全数把握から65歳以上の高齢者やハイリスク患者に限定されたが、発生届には、ワクチンの接種回数や直近のワクチンの接種年月日の記載が含まれていることから、今回の神奈川県と同様な分析は可能である。5回目接種の意義について全国規模での検討を要望する。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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