硬派のネット論壇「アゴラ」にも、疑問に思う投稿を複数、見かけました。「大谷選手被害は数十億(注=検察発表は24億円以上)」(4月12日)と題する投稿で、「大谷選手は被害者だったと安堵する声が広がっているが、日本のマスコミはなぜそのように楽観的なのか理解しがたい」と。

「野球賭博には賭けていないといわれるが、試合についての情報提供などの可能性は別問題だ」、「水原氏は(注=金銭こと?)ドジャースないしエンゼルス球団、大谷選手からも得ようとしていることもあり得ないわけではない」。このような重大発言は、正確な情報を根拠として示すできです。

この筆者は別の投稿「大谷選手の記者会見のとりあえずの感想:球団の手のひら返しの可能性も」(3月26日)で、「英語力の不足のために、通訳に促されてログインや承認などをしたということもありうる。どちらにしても社会人として非常識だ」、「球団はグッズの販売不振などを含めて、球団の収入にもかかわるので、被害が一線を超えたら、球団が手のひら返しで損害賠償や契約解除を要求される可能性も否定できない」と。想像の域を超えたような思い切った発言です。

日本人選手がメジャーと契約する場合、通訳を雇う場合が多い。通訳といっても、球団との各種の契約、弁護士とのやり取り、銀行口座の開設、住宅探し、車の購入など、多くの業務を請け負うマネージャー役です。

日本では野球一筋の人生を送り、法律、契約で使える英語力はないでしょう。だからマネージャー・通訳が必要なのです。「社会人として非常識だ」といえるのでしょうか。まあ、情報化・ネット社会の時代には、このような発言も飛び出すことを知っておくのが「社会人としての常識だ」と、私なら逆の助言をします。

一方、米紙ニューヨーク・タイムズは「水原氏、窃盗を認める方針」(4月12日、共同)と報じました。司法取引に応じ、刑の減刑を求める狙いもある」との記事です。さらに日本の国際弁護士はメディアで「罪名が賭博、窃盗、横領なら比較的軽微な罪になる」と語っています。

軽微かどうかというと、連邦検察は、水原を銀行詐欺容疑で訴追しました。「銀行詐欺は最高で禁錮30年の重罪で、金融機関をだます行為そのものや、虚偽や詐欺的な手法で金融機関が所有・管理する資産を取得した場合に適用される」(日経、4月13日)。スポーツ賭博は合法的な州が多いくらいで、「訴追されても微罪」というコメントが当初、目立ちました。

微罪どころか、重罪です。国際弁護士を名乗る日本の人物にも、知ったかぶり、生半可な知識に基づく発言が少なくなかった。

捜査情報がほとんどなかった3月末には、賭博の法制度に詳しいという米ペパーダイン大教授のコメントにぎょっとしました。「大谷選手の送金の事実(注=当初、水原を助けるために送金を手伝ったとの見方があった)があれば、大谷選手も罪に問われる可能性がある」(読売)と。本当なら大スキャンダルになる。事情が分からない段階で、コメントをとる専門家、発言内容の取捨選択、掲載は慎重でなければなりません。

今後のテーマとして、「大谷氏は損害賠償請求をして、詐欺にあった損害からどの程度を取り戻せるか。水原は自分の口座にどの程度の金銭を残していたか、非合法の賭け屋を相手に訴訟を起せるか」、「水原に騙されて、大谷氏の金銭を送金してしまったという銀行の責任をどこまで問えるか。2年間にわたり、水原は1万9000回の賭けをし、損失がでれば、銀行口座から送金していただろうから、銀行にも責任もあるはずだ」などいろいろあります。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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