情報もなく思い込みを垂れ流し
米メジャー・リーグで活躍するスーパースター、大谷選手の通訳を巡る事件で、米連邦捜査局は12日、水原一平を銀行詐欺容疑で訴追しました。連邦検事は「大谷氏は被害者とみなされる」と明言、私はほっとしました。
3月末に事件が明るみになって以来、思い込み、伝聞、想像などに基づく情報、発言、コメントが飛び交いました。米国での事件、スポーツ賭博、法律問題などが絡み、知識が不十分な日本のファンは「一体、何が真相なのか」と、翻弄されました。
捜査中の事件で、大谷選手は反論をできない立場にあるため、無責任な発言、コメントを乱発、乱造しやすかったのです。事実関係の検証もせずに気軽に発信できるネット社会の断面をみました。新聞・テレビなどのメディアもいかにも「訳あり」との印象を与える情報を流しました。
水原が逮捕され、裁判を通じ、詳しい続報もあるでしょうから、方向違いのコメントをした識者らは、自己検証して、なんらかの釈明をする必要があると思います。それを欠いた識者はもう識者といえない。
私が最も驚いたのは英フィナンシャル・タイムズ紙の大型コラム「大谷、揺らぐ純白のスター像。元通訳の賭博関与、米で憶測。残る疑問で温度差」(4月8日、日経)です。
「野球界にとっての最大の懸念は、もしも最大のスターの評判が皮膚のように薄っぺら(注=大谷は化粧品メーカーのコーセーと契約)だったことが発覚した場合、どうすればいいのかとうことである」。捜査当局の発表もまだないのに、「揺らぐ純白のスター像」と大書したのは、記者はよほど自信があったのか、思い込みがあったのか。自己検証が必要です。