ワクチン接種回数が、ヨーロッパ諸国とほぼ同数であった日本や韓国の感染者数も、ヨーロッパ諸国の10分の1であることから、人種差もあると考えられる。ハイチの人口の95%はアフリカ系黒人であるが、キューバは半数以上がヨーロッパ系白人であり、アフリカ系黒人は10%に過ぎない。しかし、米国においては、アフリカ系黒人は、白人と比較して人口比において、コロナによる死亡者数が2倍であったと報道されており、人種差だけで、違いを説明できない。
図2には、コロナの流行が始まった2020年1月から2023年12月までの人口100万人あたりの累積感染者数を示す。やはり、高接種国は低接種国と比較して、100倍以上の感染者が見られた。

図2 全期間における人口100万人あたりの新型コロナの累積感染者数Our World in Data
西浦教授は「わが国のワクチン接種はうまくいった」と評価しているが、はたして、そうだろうか。図3は、日本を含むアジア3ヶ国と米国、英国、イスラエルの人口100万人あたりのコロナによる死亡者数の変遷を示したものである。アジアの3ヶ国は、ワクチンの接種開始前には、欧米と比較して、圧倒的に死亡者数が少なかったが、ワクチンの接種開始後は、欧米と同様に死亡者数が増加し、とりわけ、日本は、2022年の8月以降は世界で最もコロナによる死亡者数が多い国になっている。

図3 人口100万人あたりの新型コロナ感染症による死亡者数の推移
東アジアやアフリカ諸国は、流行初期には新型コロナに対する交差免疫をもっていた可能性がある。ワクチンを頻回接種するとかえって免疫能が低下することが知られているが、ワクチン接種を進めなかったアフリカ諸国は交差免疫が維持されたのに対し、頻回接種を進めたわが国では交差免疫が損なわれ、世界で、最もコロナの感染者数や死亡者数が多い国になってしまったと考えられる。
西浦教授は、東京都のデータを用いて、第6波におけるオミクロン株に対するワクチンの感染予防効果についても発表している。
Assessing the COVID-19 vaccination program during the Omicron variant (B.1.1.529) epidemic in early 2022, Tokyo
表3は、各年齢群において、1〜3回目のワクチンを接種することによって感染を予防できたと推定される人数と人口を示す。0〜49歳においては、実際の人口よりも感染を予防できたと推定される人数の方が多い。

表3 東京都におけるオミクロン株に対するコロナワクチンの感染予防効果BMC Infect Dis.2023;748
日本には、感染症の分野において数理モデルを用いて疫学研究に取り組んでいる研究者は西浦教授を置いて他になく、彼の独壇場である。コロナ感染の対策において果たした役割は大きい。しかし、西浦教授の提唱したモデルによる推定値と実際の値との乖離は甚だしい。西浦理論の妥当性については、各方面からの検証が必要と思われる。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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