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わが国におけるコロナワクチンの接種は、2021年2月から始まったが、京都大学の西浦博教授らのグループは、この時期にワクチンの接種がなければ、2月から11月の感染者数と死亡者数は6,330万人、36万人に達した可能性があると発表した。

Evaluating the COVID-19 vaccination program in Japan, 2021 using the counterfactual reproduction number

この期間の実際の感染者数と死亡者数は470万人と1万人であったことから、ワクチンは、90%以上感染者数や死亡者数を削減したことになる。この結果をもって、西浦教授は「結果的にわが国のワクチン接種はうまくいった」とコメントしている。

コロナの流行初期に、西浦教授が、第2波に対して、何も対策をとらなければ85万人が重症化し、死亡者数は42万人に達すると警鐘を鳴らしたことは記憶に新しい。

2020年6月から10月に襲った第2波に対して、わが国はまん延防止等重点措置を発令したが、この期間におけるコロナによる死亡者数は700人であった。ロックダウンを行って、より厳しい行動制限を行ったニューヨークが、4月から6月の3ヶ月間で3万人を超える死亡者があったことを考えると、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による行動制限が、死亡者の減少にどれほど効果があったかについては疑問が残る。

今回の発表も、西浦教授の試算と実際の感染者数や死亡者数とに大きな乖離があることからその信憑性について疑問の声が聞かれる。この期間における全世界のコロナ感染者数は1億5,300万人なので、日本で感染したとされる6,330万人はその41%にあたる。世界を見渡せば、この時期にコロナワクチンの接種を推進しなかった国もある。これらの国の感染者数と死亡者数はどうであっただろうか。

表1には、2020年2月から11月におけるワクチンの接種回数が、100人あたり10回以下の国と100回以上の国の人口100万人あたりの累積感染者数を示す。

表1 ワクチン低接種国と高接種国の接種回数と累積新型コロナ感染者数の比較Our World in Data

ワクチン低接種国のほとんどはアフリカ諸国であるが、コロナの感染者数は、81人から2,667人で、中央値は835人であった。一方、ワクチンの接種回数が100回以上の国の感染者数は、アジアの3カ国を除けば、60,720人から102,217人で、中央値は90,965人であった。ワクチン高接種国の感染者数は、低接種国のざっと100倍である。なお、日本を含むアジアの3カ国は、ワクチンを接種しているにもかかわらず、感染者数は他の地域の国と比較して10分の1であった。

図1に、同じ時期におけるワクチン低接種国と高接種国の、人口100万人あたりのコロナ感染による死亡者数を示す。低接種国では、期間を通じて、1日あたりの死亡数は1人以下であったが、高接種国では、その10倍であった。

図1 人口100万人あたりの新型コロナ感染症による死亡者数Our World in Data

ワクチン低接種国は、ほとんどが、アフリカ諸国であり、未診断のコロナ感染者や死亡者が多く、その結果、報告された感染者数や死亡者数が少なかった可能性も考えられる。そこで、この期間における低接種国と高接種国の超過死亡を比較してみた(表2)。その結果、低接種国の超過死亡が高接種国と比較して多いことはなく、未診断の死亡者数では、今回の差は説明し難いと考えられた。

表2 ワクチン低接種国と高接種国の超過死亡の比較Our World in Data

ハイチとキューバは、同じカリブ海に浮かぶ隣国であるが、ワクチン接種がほとんど行われなかったハイチと比べて、ワクチン接種が進んだキューバでは、80倍のコロナ感染者数が見られた。