4人の空軍将校間の議論は、ウクライナ軍によるドイツのタウルス巡航ミサイル使用の可能性と考えられる影響について議論したが、それはピストリウス国防相からの要請に基づいたものだった。ただし、ピストリウス国防相の情報要求はタウルス配備の予想を前提としたものではなく、あくまでも純粋な軍事的な情報の収集だったという。
独空軍士官たちは議論の中でウクライナ軍に巡航ミサイル「ストームシャドウ」を供給した英国と、巡航ミサイル「スカルプ」を供給したフランスを例に挙げている。会話の参加者の1人は「イギリス人がどうやってやるか知っている」と語った。「彼らも現場(ウクライナ内)に数人いる。フランス人はいない」と語っている(オーストリア国営放送のヴェブサイト)。
ちなみに、ショルツ首相は英国やフランスがウクライナに既に軍関係者を派遣していることを示唆する発言をしており、英国ではショルツ氏の発言に対して怒りが起きたばかりだ。この種の情報は同盟国間のコンフィデンシャルである。ショルツ首相の発言は同盟国内の機密情報を漏らしたと受け取られ、批判にさらされたわけだ。もちろん、英仏両国はショルツ首相の発言内容を即否定している。
ちなみに、ロシアのラブロフ外相は訪問先のトルコのアンタルヤで、「独連邦空軍士官たちの会話は欧州の戦争陣営が依然として戦争を煽っていることを示した」と述べ、今回の問題でドイツ側に説明を求めている。
ドイツでは主力戦車「レオバルト2」のウクライナ供与で長い国内の議論が起きた。タウルス巡航ミサイルの供与問題でも与野党間だけではなく、与党の連立政権内でも意見が分かれている。ひょっとしたら「レオパルト2」の供与問題での政府内の議論も当時、ロシアに盗聴されていたのかもしれない。
連邦議会国防委員会のマリー=アニエス・ストラック=ツィンマーマン委員長(自由民主党=FDP)は、「モスクワはショルツ首相がタウルスの引き渡しにゴーサインを出すのを阻止したいと考えている」と指摘し、「ロシアのスパイ活動はハイブリッド戦争の一部だ。我々はいつまでも無邪気であってはならない」と述べている。
野党「キリスト教民主社会同盟」(CDU/CSU)の連邦議会院内総務代理ヨハン・ヴァーデフルはRNDとのインタビューで、「敵対する国は我々の弱さを冷酷に利用する。戦争は古典的な戦場で起きるだけではない」と指摘、サイバー攻撃に対する防御対策の強化をアピールしている。
以上、ORFのヴェブサイトの記事を参考にまとめた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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