ドイツの大使館再開の動きについて中国側も歓迎している。シュピーゲル誌によると、北朝鮮がここにきてロシアとの関係を急速に強化していることに北京側は少々懸念している。西側情報筋によると、北側は約7000のコンテナでミサイル、砲弾など武器をモスクワに送っている。中国側は、ドイツが北朝鮮に大使館業務を再開することで北側のロシア傾斜にストップがかかるのではないかと期待しているという。

北朝鮮外務省は昨年末から在外公館の見直しを推進し、ウガンダ、アンゴラ、スペイン、在香港の総領事館、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ネパールなどの大使館を次々と閉鎖した。これについて「外交的力量の効率的な再配置」と主張しているが、韓国側は、「国際社会による制裁の強化で外貨稼ぎが困難になり、公館の維持が難しくなっているため」との見方をしている。

韓国情報筋によると、北側が武器をロシアに供与する代わりに、先述したように軍事関連ノウハウをモスクワから得ると共に、食糧などを大量に援助されているという。北側が韓国を含む国際社会に対し、強硬姿勢を取れる背後には、中国からだけではなく、ロシアから大量の食糧援助などの物質的支援が大きいことがある。

ちなみに、北朝鮮の最大の外交課題は、米国との関係改善、対北制裁の解除だった。その意味で、金正恩氏は2019年、トランプ前大統領と首脳会談を通じて米朝関係の改善を図ったが、その外交は成果なく終わった。金正恩氏にとって米朝交渉の失敗は大きな痛手となって残っているといわれる。金正恩総書記はその後、核戦力の強化に乗り出す一方、中国、ロシアとの関係拡大に腐心している。ハノイの米朝首脳会談の暗礁後、北は非核化交渉を放棄し、核保有国のステイタス獲得を目指してきた。北側の国家戦略が大展開したわけだ。

なお、ドイツが朝鮮半島の状況には強い関心を持っているのは、ドイツが東西両ドイツの分断国家であったこと、そして1990年に再統合を実現したという歴史的な経験が韓国と北朝鮮の南北分断国家の再統合に何らかの貢献ができるのではないか、という思いがあるからだという。金正恩総書記が韓国を「第一の敵対国」と位置付けた現在、ドイツは強い危機感を持っている。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?