今回の東京15区補選にみる候補者乱立の状況を分析してみると、自民党の弱体化した選挙には往々、リベラルを自称する候補者が乱立することになるという典型例がそこにある。
日本の政治環境では必然だが、同時にその先にあるものを注視する必要があるだろう。
自民党の対立軸ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、ご自分のYouTubeチャンネルにおいて、「日本の政界における対立軸の本質は、保守対リベラルであり、今の自民党は保守政党ではなくリベラル政党であって、日本国内の本来の保守政党は日本保守党だ」と評していて、「自民党がリベラル政党になったからこそ、その対立軸としての新しい保守政党である日本保守党がクローズアップされてくるだろう」と分析していた。
私は長年、自民党がその本質においてリベラル政党であり、むしろ日本の唯一のリベラル政党は自民党であると言ってきた。私がそれを確信したのは、今の岸田政権ではなく安倍元総理の時代だ。
リベラルと言う言葉の定義については、諸説あるとしても、以前から指摘しているように、アメリカの哲学者ジョン・ロールズが提唱した地域コミュニティにおける共生社会の最適解を模索する上でのリベラリズムがそもそもの発端ではないかと私は考えている。
現代の奴隷商人と併せて、この点については、後ほど触れる。
さて、今回全国的にも注目されている東京15区だが、その原因は、自民党が独自候補を擁立せずリベラル寄りの乙武氏を支援すると決めたことで、先述の長谷川氏は、LGBT理解増進法推進時の有り様も含め、自民党がリベラル寄りの政党に移行してきた証左だと解説している。
流石にそれは極端だと思わないでもない。そもそも、政治資金不記載問題で揺れる自民党にとって、今回の補欠選挙に独自候補を立てて全力で応援できる状況にないことが、年初来からはっきりしていた。自民党としては補欠選挙ににエネルギーを割く余裕が無い。
東京と言えば公明党のお膝元でもあるが、公明党もだからと言って、即座に集票力のある候補者を立てられる状況には無かったのだろう。いれば直ぐにでも擁立した筈だ。つまり公明党も内部的には創価学会自体の基盤も怪しい状態になってきていることを示している。
自民党が独自候補を立てず乙武氏支援を決めた背景は、乙武氏を擁立した「ファーストの会」が中道保守の政治思想を持っているからで、立ち位置としては自民党に近いからだろう。今回の乙武氏支援がそのまま小池都知事の「都民ファーストの会」との協力関係強化や、都民ファーストの会が自民党を取り込んで、小池百合子政権誕生まで一気に進むと予測している人もいるようだが、それはないだろう。
仮に衆院解散に合わせて小池都知事が辞任し、衆議院に鞍替えしたとしても、公明党を押さえつけて小池総理誕生まで持っていくには、時間が必要だ。自民党内の派閥が解消されたと言うのはただ表面的なことであって、元々、清和政策研究会(安倍派)の流れを汲む小池百合子は、自民党内では保守本流と言えなくもない。