21世紀の戦争は単に戦場(正規戦)だけではなく、情報工作など(非正規戦)が大きな役割を果たす。通称「ハイブリッド戦略」だ。軍部広報担当者の仕事はその意味で非常に重要だ。イランが13日夜から14日にかけ300機を超える無人機やミサイルをイスラエルに向けて発射した直後、イスラエル国防軍(IDF)のハガリ報道官はカメラの前に立って、「わが軍の防空システムがイランからの無人機などをほぼ全て撃ち落とした。その的中率は99%だ」と笑顔を見せながら説明、IDFが世界に誇る防空システムが如何に優秀であるかを誇示。イランの報復攻撃による被害については、一か所の軍関連施設に被害が出たほか、南部アラドで1人の少女が負傷したと発表し、「負傷した子供の回復を祈る」と述べた。イスラエル側の余裕すら感じさせるブリーフィングだった。
一方、イラン国営IRNA通信によると、「イラン革命防衛隊」(IRGC)のホセイン・サラミ少将は「報復攻撃は予想以上に成功した」と発表した。イランのアミール・アブドラヒアン外相は「イスラエルが攻撃をしたならば、わが国は更に厳しく対応する用意がある」と強硬姿勢を見せた。いずれにしても、14日のIRNA通信はイラン側の報復攻撃の成果を誇示する内容で溢れていた。
イラン側の政府・外交担当者の発言の中で、「本音が出ているな」と思ったのは在ニューヨーク国連機関のイラン代表部の「イランの軍事攻撃は国連憲章が明記している自衛権に基づくものだ。今回の攻撃でわが国の報復攻撃は終結する」と表明したコメントだ。イスラエルが今月1日、シリアの首都ダマスカスのイラン大使館を空爆したことを受け、イスラエルに報復攻撃をすると内外に宣言してきた。そのため、報復攻撃は必ず実行されなければならなかった。一種の必修科目だった。ただし、中東の軍事強国イスラエルとの正面衝突は可能な限り避けたいのがイラン側の偽りのない事情だろう。