よって、簡単に飛び込むとドリブルで交わされて突破される。かといって、離れると決定的なパスを放たれる。ロングレンジからのドライブシュートが得意なため、ゴールが見えてくると相手に極めて難しい選択を迫ることになる。プレスがかかった状況でも高い技術とセンスでボールをキープするため、相手は簡単にボールを奪うことができない。

小柄なため屈強なDFは力でネジ伏せることができると思うかもしれない。しかし、素早いため身体を寄せられるところまでいかない。そして、ようやく身体を当てられる距離感になってチャージしても倒れるのではなく、その力を利用してさらに加速するボディーバランスと粘り強い下半身を持つ。

ボールを奪われないので、ためるも早く出すも自由自在で、中盤で試合のリズムを作り出すことができる。ひとまずボールを預ければ、うまくゲームをコントロールしてくれる頼もしい存在だ。

ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

想像力あふれるビジョンで攻撃を構築

モドリッチは小柄なため狭い所でも股抜きするなど細かいパスやボール捌きがうまいが、その瞬間にも遠くが見えていて、狭い所から小さなモーションで急にロングパスを出すことができるのが凄い。ピッチのどこにいてどんな体勢でも、決定的なパスが飛んでくるので相手は安心していられない。

モドリッチはサッカーIQが高く、空間認知能力に優れる。常にピッチ上で何が起こっているのかつぶさに観察し、まるで上空を飛ぶドローンの映像と接続し頭の中でデジタルツインをリアルタイムで更新しているかのような精密さで把握している。俯瞰するように状況を深く理解しているからこそ、プレーのその先の読みが早く的確なのだ。

いつ誰がどこにいるかを分かっているので、パスだけではなくボールを触らずにスルーすることもある。また、ボールを触らずして体の動きや目線で逆をとって相手を交わすこともある。ボール捌きが巧みなら、ボールを触らない動きも巧みだ。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

セットプレーのプレースキッカー、ボールの軌道をイメージ