しかし、そういう創業の頃から「この分野以外は受けない」というスタンスでいたらどうでしょうか。おそらく気をつかって仕事を出そうとしていた経営者も、「申し訳ないですが、この分野の仕事しか受けたくないのです」といわれたらその後、協力する気持ちが萎えてしまいます。
これは経営戦略がどうというより、人として紹介が増やせるかどうか、という問題です。ですから、専門を絞るというのはかまいませんが、「仕事を最初から選んでいる」と思われないようにしたいものです。
専門を絞るということは、「それ以外やらない」ということではないそうなれば、「専門を絞っても他の仕事も受ける」というスタンスになります。少なくとも「やりません」と拒絶することなく「私より○○先生にお願いしたほうが確実ですので、ご紹介させてください」と他の方を紹介したほうがよいでしょう。そして、できることなら最初のうちは依頼された仕事はどのようなものでも、受けてください。
なぜ、ほかの仕事も受けたほうがよいのかというと、単純明瞭にいえばさまざまな実務経験を積んだほうが将来的に仕事の幅が広がるからです。そして、仕事を絞ってしまい、それ以外の仕事を受けないとすると、せっかくの売上増加のチャンスをみすみす失うことになるからです。
賛否両論ありますが、私はどんな仕事でも創業期は受けるべきと考えています。創業の頃は仕事を取るだけでも一苦労なわけですから、仕事をえり好みしている状況ではないといえます。ですから、数千円の手続きでも小口の顧問でも大切にしてほしい、というのが私の考えです。
私の場合、結果論ではありますが、当初は5万円を超える仕事はありませんでした。数千円の車庫証明、1万円ほどの内容証明郵便の作成、値引きされた宅建業許可、会社設立手続きなど、冷静に見れば相場よりもかなり安く、「これだけ働いてこの報酬か……」と悩むこともありましたが、仕事があることはとてもありがたかったと感じています。