これは保険料を15%として計算しているが、企業にとっては事業主負担を含む30%が人件費なので、長期的には30%が労働者の負担になるというのが経済学の常識である。それにもとづく島澤諭氏の計算では、95歳まで生きるとしても45歳以下の人は死ぬまで元がとれない。

「保険はすべての人が元を取れるものではない」という反論があるだろうが、今の厚生年金の設計では少なくとも半数の人は元が取れる計算になっている。ところが今の50歳以下は、100歳まで生きても損するのである(国民年金は半分税金なので、必ず元が取れる)。

消費税から逃げる政治家が現役世代に負担を押しつける

このように大きな不公平が出るのは、大幅な過剰給付になっている国民年金の辻褄を合わせるために、厚生年金から国民年金への大規模な所得移転が行われているからだ。今でも第3号被保険者には第2号から毎年4兆円の所得移転が行われるが、今度は初めて堂々と2階の資金を1階に流用する。これは後期高齢者医療費に健康保険料から「支援金」が流用されているトリックと同じだ。

その原因は消費税が上げられないからだ。今回のマクロ経済スライド修正も、すべて消費税でやればサラリーマンに負担は集中しない。さらにいえば基礎年金をすべて消費税に置き換える最低保障年金にすれば、このような複雑な会計操作は必要なくなる。

来年4月からは中小企業のパートに15%の保険料が発生し、中小企業の人件費が30%上がる。この事業主負担を8割とか9割にする補助金を出すという話もあるようだが、最終的には人件費はすべて労働者の負担になる。

野党もマスコミも、今回の年金法改正には賛成のようだが、このような弥縫策を続けていると、不公平な年金制度がますます不公平になり、そのうち現役世代の反乱が起こるだろう。基礎年金を消費税に置き換えることを含めて、抜本改革を議論すべきだ。