2025年は「太陽フレアのピーク」とされ、太陽フレアによる災害の発生が強く懸念されています。皆さんは「太陽フレアが発生するとスマホやパソコンの通信機能が使えなくなる」という話を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
実際、太陽フレアが発生すると通信障害が生じるのは都市伝説ではなく、事実です。過去には、イーロン・マスク氏が手がける衛星インターネット「スターリンク」の一部衛星が、太陽フレアの影響で機能停止した例もあります。
では、今後1年間に頻発すると予想される「太陽フレア」が発生すると、具体的に何が起きるのでしょうか?
今後1年は「太陽フレア」が頻発:具体的に何が起きる?
太陽フレアとは、太陽の黒点周辺で発生する爆発現象のことです。この爆発により、電磁波、高エネルギー粒子、プラズマ(太陽風)などが放出され、それらが地球に到達することがあります。太陽活動は約11年周期で活発化と沈静化を繰り返しており、現在は活発化の時期にあります。そのため、今後1年間は太陽フレアの発生頻度が高まると予測されています。
太陽フレアが発生すると、以下のような3つの現象が生じ、通信障害や電力網への影響、さらには衛星機器にダメージを与える可能性があります。
電磁波の発生
太陽フレアが発生すると、強力なX線や紫外線などの「電磁波」が放出され、最短で8分ほどで地球に到達します。これにより、短波放送や航空無線、GPSの精度などに悪影響が及ぶことが知られています。
粒子の放出
太陽フレアの際に放出される高エネルギー粒子は、まず宇宙飛行士にとっての危険要因です。宇宙空間で活動中の宇宙飛行士は国際宇宙ステーション内に避難します。また、人工衛星にも影響を及ぼし、衛星のコンピュータや太陽電池パネルが劣化することが懸念されます。将来的に衛星インターネットがさらに普及することで、通信障害のリスクも高まるでしょう。
ガスの地球への到達
太陽フレアに伴い、大量のガスが放出されると、地球では磁気嵐が発生し、衛星の機器や無線通信に障害をもたらすことがあります。この磁気嵐により、過去にはスターリンク衛星(※一部)の機能停止です。
過去、太陽フレアの発生時に起きた事故の例:スターリンク衛星の機能停止
スターリンクは、イーロン・マスク氏がCEOを務めるSpaceX社が提供している衛星インターネットサービスです。地上のスターリンク端末と人工衛星間で通信を行い、インターネット接続を可能にしています。
端末のセットアップが簡単なこともあり、従来は通信インフラを整えることが難しい被災地や戦地、辺境地域でのインターネット利用も実現可能です。また「夏フェス」に代表されるモバイル通信に障害が発生しやすい大規模イベントの、柔軟かつ大規模な通信環境整備にも役立ちます。
将来的には固定回線に依存しない上に柔軟性が高い通信インフラとして、衛星インターネットはほぼ確実に国内でも定着するでしょう。
先述した通り、太陽フレアは人工衛星にも影響を与えます。2022年には、太陽フレアとそれに伴う磁気嵐の影響で、スペースXが打ち上げた多数のスターリンク衛星が機能停止するトラブルがありました。
具体的には同社が打ち上げた衛星49基のうち、40基が機能停止したものとみられ、磁気嵐による衛星被害としては過去最大級と言われています。衛星インターネットや、GPS衛星による測位がさらに普及した場合、太陽フレアと磁気嵐は一種の「宇宙災害」としてますます無視できない存在になり得ます。
2017年にはGPSに10メートルのズレも発生
2017年には、太陽フレアの影響でGPS測位に最大10メートル程度のズレが生じたケースもありました。なおこのときに発生した太陽フレアは「10年に1度」の規模でした。
今後「自動運転の自動車」や「ドローン」が増えた場合、それらのナビゲーションにはGPSがほぼ間違いなく利用されるでしょう。すると太陽フレアと磁気嵐の発生によって、10メートル、GPSがずれると「大規模な交通事故」を招くリスクもあります。