特徴あるドラマが再生数につながる

 次に個別のドラマで関係性を探ってみよう。TBSの『ブラックペアン シーズン2』(二宮和也)の個人視聴率は個人全体・コア層・19歳などで他のドラマを圧倒した。初回のAVOD再生が200万回突破と好調だったが、これだけ話題になれば当然という感じだ。

フジテレビ快挙、夏ドラマ再生回数1億を突破で他局を圧倒…広告収入が大幅増
(画像=(c)次世代メディア研究所,『Business Journal』より 引用)

 ところが、個人視聴率では2位以下にこれだけ大差をつけた『ブラックペアン』だが、AVOD再生は第1話が600万回を超えた『海のはじまり』にはまったく及ばなかった。特定層別個人視聴率で比べると、男子中高生や小学生男女で『海のはじまり』に逆転されている。特に小学校低学年では倍近い差をつけられている。主役の目黒蓮の人気だけでなく、目黒の娘・海を演じる泉谷星奈(いずたにらな)の存在が大きいようだ。本当に小学1年生なのかと思うような演技力は、SNS上でも称賛する声が寄せられている。もちろん、そんな存在を魅力的に描くシナリオと演出の力も忘れてはいけない。2010年の日テレ『Mother』(松雪泰子)での虐待を受ける小学1年生・怜南(芦田愛菜)を思い起こさせる“大人びた”一面を見せる海と、周囲の大人たちとの関係。これが話題が話題を呼んで、歴代最高となる再生数につながったのだろう。

 フジの夏ドラマの強みは他にもある。『新宿野戦病院』は脚本家・宮藤官九郎が手掛ける初の医療ドラマ。新宿歌舞伎町を舞台に、ホスト・キャバ嬢・ホームレス・トー横キッズ・外国人難民などが交錯するなかで「命」の尊さを問いかける一風変わった「救急医療エンターテインメント」だ。やはり初回の見逃し配信は300万回再生を超え、水10ドラマ歴代1位となった。

『ビリオン×スクール』も特筆に値する。個人全体の平均視聴率は1.9%で、GP帯ドラマ全14本中最下位。コア層でも13位、Z世代でも12位とまったく振るわない。ところが19歳以下では5位に急上昇し、中高生や小学校低学年では4位に輝く。ネット配信では初回が300万回を突破した。ネット記事などでは個人視聴率の低迷で「大爆死」などと揶揄されているが、ネット展開上はベスト5に入る奮闘ぶりなのである。