“成功事例”にはなり得ず
今回の選挙選をめぐっては、選挙報道をリードするはずのテレビ・新聞などの主要オールドメディアに対する有権者の不信に加え、有権者がSNSから多くの情報を取得していたことが斎藤知事の当選を生んだとの解説が目立っている。
たとえば群馬県の山本一太知事は21日の記者会見で、「テレビ、新聞、雑誌など既存メディアから一方的に非難された候補者が当選したケースは、いまだかつて見たことはなかった。兵庫県民は既存メディアの報道をうのみにしなかったということで、初の現象。選挙の転換点になるのではないか」と分析した。
同様の見方はテレビ界のなかからでも出ており、フリーアナウンサーの宮根誠司は17日放送の報道番組『Mr.サンデー』(フジテレビ系)内で、「今回、私個人が思うのは、大手メディアのある意味、敗北です」「これから大手メディアが選挙戦をどう伝えていくのか、今回の兵庫県知事選で我々が突きつけられました」と発言。TBSの安住紳一郎アナウンサーは18日放送の情報番組『THE TIME,』内で「テレビ、メディアに対する批判も十分自覚しているつもりです。みなさんがテレビに物足りなさを感じている。『SNSと比べて』などなど意見があると思います」「SNSと同じようなことを今のテレビではできませんが、やはりプライベート、さらには裏を取ること、そして公平にということで信頼感がある情報をSNSと並んで選択肢として選んでもらえるように、もう一度、作業を丁寧に重ねていきたいと思います」と発言した。
このほか、テレビの選挙報道のあり方も議論の的となっている。たとえば、18日放送の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でコメンテーターの玉川徹氏は「既存メディアは公職選挙法に縛られる。法律で手足を縛られている。だけど、今はSNSが一つのメディアとなっているなかで、まったくここは縛られない。今回改めて斎藤さんを当選させるという方向で、これだけ大きな力を持った。既存メディアはいろいろ考えていかないといけない」と解説。これに対し元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏はX(旧Twitter)上に
「完全に逃げ。公選法も放送法もそこまで縛っていない。きちんと公平に放送すればいいだけなのに批判を恐れて極度に自主規制しているだけ」
「そもそもメディア関係者は『放送法は行政指導の根拠にならない。あくまでも放送局の自主規制、倫理的規範』と言っていたはず。それが今、放送法に縛られてSNSに反論できなかったと言い訳するメディア関係者が多い」
「放送局はなぜ極度な自主規制をやっているのか。それは政党や政治家、視聴者から文句を言われるのが面倒だから、それなら放送を控えようとなっているだけ。いよいよメディアも変わる時期だ。SNSと切磋琢磨して有権者に判断のための情報を届けるべきだ」
とポストした。
前出・全国紙記者はいう。
「今回の選挙では斎藤陣営による巧みなSNS戦略が成功したことが当選につながり、これまでの選挙のあり方を大きく変えたといわれているが、そのSNS戦略が違法な手段で実現されたものであったすれば、“成功事例”にはなり得ず、称賛されるべきものでもなくなるでしょう」