任天堂は勝ち目があると判断しないと提訴しない

 パルワールドの登場キャラクターが「ポケモン」のそれに酷似しているという点は、「パルワールド」リリース当初から指摘されており、1月にはポケモン社が以下のコメントを発表していた。

「お客様から、2024年1月に発売された他社ゲームに関して、ポケモンに類似しているというご意見と、弊社が許諾したものかどうかを確認するお問い合わせを多数いただいております。弊社は同ゲームに対して、ポケモンのいかなる利用も許諾しておりません。なお、ポケモンに関する知的財産権の侵害行為に対しては、調査を行った上で、適切な対応を取っていく所存です」

 その後、この問題をめぐって目立った動きはなかったが、9月、任天堂とポケモンはポケットペアに訴訟を提起したと発表した。任天堂の訴えが裁判所に認められる可能性は高いのか。

「現時点では明確な結論は出せません。ただし、任天堂の知財部については、過去の事例から判断するに勝訴の可能性が低い訴訟を起こすケースは少ないとの心証を持つ方が多くいるようです。任天堂は、ゲーム業界大手として業界全体の知的財産保護の土台をつくってきた存在であり、どちらかといえば業界の発展のため自社が所有する特許についても、ある側面で開放的な姿勢を持つ企業だという印象があります。その同社が今回、提訴に踏み切ったといことは、任天堂にとってさすがに看過できないと判断した事情があり、また放置しておくことはゲーム業界の健全なコンテンツ産業の育成という観点からも好ましくないと考えたのかもしれません」(永沼氏)