ガルシア・ルナ氏の配下には警察官ら4万人の職員がいた。彼はカルデロン元大統領の手となり足となってカルテルの撲滅に取り組んだ。カルテルの撲滅と言っても、実際にカルデロン元大統領が狙っていたのは、強力なカルテルにだけ裏では味方し、その強力なカルテルから他のカルテルについての情報を貰ってカルテルの取り締まりを厳しくしていくことであった。
そこで、カルデロン元大統領が当初味方にしたのが二つのカルテル、シナロア(Sinaloa)とベルトラン・レイバ(Beltran Leyva)であった。この二つのカルテルに対して、彼らの米国への麻薬の密輸を政府は見ないふりをして容易にさせた。その一方で、彼らから情報を貰った他のカルテルに対しては警察や軍隊を派遣して交戦した。
その後、時が経過すると、この二つのカルテル同士で縄張り争いなどで戦う羽目になった。最終的に政府はシナロアを味方にするのである。だから、シナロアは政府による背後からの支援があり急成長したというわけである。
この仲介をやっていたのが元公安相のガルシア・ルナ氏であった。彼は多額の賄賂をシナロアから受け取り、その代わりにシナロアの違法行為を容易にさせたり、見て見ぬふりをしていたというわけである。
シナロアの元メンバーの法廷での証言によると、シナロアが米国内に数十トンのコカインを密入国させるのに2005年から2007年までに6億ドルの現金を彼に渡したと供述している。これは一つの例で、ガルシア・ルナ氏は多額の賄賂をシナロアとベルトゥラン・レイバから受け取っていた。
彼はあたかも法を守る正義の味方であるかのようにカルテルと戦う姿をテレビのレポートで取り上げさせるような工作もした。麻薬で苦しむ米国では、彼のことが話題になり、麻薬取締局(DEA)も彼に協力の手を差し伸べていた時期もあった。
ところが、その裏ではカルテルのメンバーに警察の制服を着させてライバルのカルテルの取り締まりに参加させたこともあった。それを明らかにしたのはセルヒオ・ビリャレアル氏というカルテルのメンバーのひとりだ。彼はまたガルシア・ルナ氏とロペス・オブラドール前大統領にも賄賂を渡したと証言している。
フェリペ・カルデロン元大統領もカルテルと繋がっていた