画像のような真空ピストンシリンダーと加圧用空気バッグを用いるなら、大気と真空の差圧を利用して、能動的かつ安定して、輸液バッグに圧力を加えていくことができるはずです。
実際、試作した「寝袋型の空気バッグ(寝袋のように空気バッグが輸液バッグを包む形式)」は、ある程度、吐出量を安定させることができました。
しかしグラフから分かる通り、「寝袋型」は、時間が経つにつれ吐出量が安定しなくなり、従来の「吊り下げ点滴」と同じ吐出性能には至りませんでした。
研究チームが調査した結果、圧縮された輸液バッグの表面にしわが生じることで、内部の薬液に圧力が効果的に伝達されないことが原因だと判明しました。
そこで試行錯誤を繰り返し、分離した2つの空気バッグで輸液バッグを挟むような「サンドイッチ型の空気バッグ」にたどり着きました。
この形状であれば、空気バッグと輸液バッグの接触面を密着させて、しわをサンドイッチの両外側に伸ばすことができ、後半でも吐出量が安定します。
そしてこれにより、従来の「吊り下げ型」と同等の吐出性能を達成できました。
産総研は、このサンドイッチ型の機構に関して特許出願を行いました。
そして既に医療機器として登録されています。
研究チームは今後、携帯性と操作性の向上を目指して、更なる技術開発を進める予定です。
この「吊るさない点滴」が使用可能になるなら、患者たちの自由度は高まるはずです。