そこで外国籍であっても違反した金融機関にはアメリカでの活動を禁止する内容を持つアメリカの国内法の内容に従うことになる。具体的には、ICCの金融資産を差し押さえないと、アメリカでの商取引から締め出されることになる。そのリスクを背負いきれないので、通常は日本や欧州の金融機関は、一斉にアメリカの金融制裁の内容を履行する。
単純に考えれば、この措置を通じて、アメリカは、ICCを事実上の活動停止の状態に追い込むことができる。ICCが自らの資産を使えなくなるからだ。
だが、検察官の逮捕状要請から正式決定まで6カ月もの時間があった。ICCにとっては、アメリカの金融制裁に対応する準備を検討するための時間だったはずである。工夫に工夫を重ねて、アメリカの金融制裁をかいくぐって、活動を続けるための措置を検討したはずだ。職員の多くは、自らの金融資産の防衛措置を個人努力でとっただろう。組織としてのICCも同じであったはずだ。
なおオランダの国内法整備・運用にあたってのオランダ政府の協力は、アメリカの制裁をかいくぐるために、ICCにとっては極めて重要な要素である。
ただICCにとって不確定要素になっているのは、オランダで直近の選挙で反移民政策を掲げる極右と描写される自由党が第一党になったことだ。絶対多数ではなかったため、党首のウィルダース氏が首相になるほどではなかった。しかしウィルダース氏の自由党の影響力が強まったことは当然である。
反移民とは、実態として、反イスラムである。ウィルダース氏は、かなり踏み込んだイスラエル支持者でもある。今回のICCの逮捕状発行を快くは思っていないだろう。とはいえオランダ政府は、いち早くICC支持の声明を出しており、大勢は変わっていないことをアピールしている。
締約国の支持は、国際世論を喚起してICCの活動に有利な環境を作るためにも、具体的な工夫の措置をとるためにも、重要な要素である。しばしば指摘されてきているように、日本は財政貢献においてICCの筆頭格の国であり、その存在感は小さくはない。残念ながら、これまでのところ、日本のICC支援といえば、ロシア・ウクライナ戦争をめぐる活動に特化しており、ガザ危機をめぐっては、発言を控える傾向が続いている。