(3)「イオンシネマは車椅子ユーザーに対して『合理的配慮』ができてない!これは障害者差別解消法違反だ!」
法律のガイドラインをお読み頂ければ明白ですが、合理的配慮は「その実施に伴う負担が過重でないときに」講ずること、とされています。
そして、車椅子ユーザーに対する合理的配慮の具体例として「車椅子のまま着席できるスペースを確保」が挙げられています。
そのため今般のように「介護資格者でもないスタッフに車椅子と人を運ばせ、段差がある席まで移乗させる」というのは明らかに「過重負担」です。合理的配慮義務とは、決して「ワガママを全て受け容れる」と同義ではありません。
(4)「じゃあなんでイオンシネマは謝罪文を出してるんだ!? イオンシネマ側にも悪いところはあったんだろう!?」
これも謝罪文をよく読めば分かりますが、イオンシネマが詫びているのはN氏に対する「不適切な発言」のみです。合理的配慮については一切言及していません。
あえてイオンシネマ側の問題を挙げるとするならば、これまで良かれと思って、N氏に対して介助(移乗)サービスを複数回おこなってしまったことですね。そのため「前はやってくれたのに」という前例を作ってしまいました。
「当劇場には身体介助できる有資格者がおりません。お客様にもしものことがあっても責任を負えませんので、サービス提供はできません」で通しておくべきでした。
(5)「なぜ日本人は障害者や弱者にこれほど厳しいのか!? 人権意識が低い!」
障害者に厳しいのではなく、「理不尽な要求をするクレーマー」に厳しいだけです。あと、低賃金で理不尽クレーマーの相手をさせられる接客スタッフもまた弱者といえますので、人権をとやかく言うなら、店員さんの人権にも配慮すべきでしょう。
またN氏は「車椅子インフルエンサー」を自称しているようですが、氏の今般の発言のせいで、他の車椅子ユーザーの方々がこれまで築いてこられた善意と信頼の関係をブチ壊し、彼ら・彼女らが肩身の狭い思いを強いられることになりかねません。せいぜい「迷惑系YouTuber」といったところでしょう。
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今般の騒動で、イオンシネマで働く方々が今後理不尽な対応を強いられ、無理をされることがないよう、くれぐれもお願いしたいところです。会社側は顧客のみならず、従業員の皆さんの心身の安全も確保なさってください。
あと、社会運動家の皆さんもぜひご留意頂きたいですね。単に弱者属性に身を置いていれば正しい側に居られる時代はもう終わりました。
日々の活動の中で、我々一般労働者やサービス従事者の善意をさも当然かのように扱い、理不尽な要求を強いて、断られたら会社相談窓口よりも先にSNSで晒して悪者扱いをしてしまうと、あなた方のお仲間の支持は得られても、大多数の労働者を敵に回すことになりますので。
(編集部より)この記事は、新田 龍@nittaryoのポストを、許可をいただいた上で転載いたしました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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