1. 再生可能エネルギー

    2021年8月経済産業省は、各種電源の2030年における発電コストの精査結果を公表した。この発電コストは、LCOE(Levelized cost of electricity、均等化発電原価)と呼ばれ、発電所を新設した場合の建設や運営にかかるモデル費用だ。

    メディアが注目したのは、再生エネルギー由来の発電コストが、火力発電などより低コストになったということだった。この結果、特に太陽光発電については、設備費が他の電源と同程度に安くなったなどという理由を付け、東京都や川崎市では太陽光パネル設置義務化条例などが採択されている。

    この試算結果については、再エネ発電出力の不確実性や低稼働率対策として必要とされる、

    既存火力設備の運用変更や発電効率の低下に伴うコストが含まれていない 同時間同量出力を維持するための石炭火力などの調整電源コストが含まれていない 送電網への接続費などが含まれていない

    といった欠陥があり、すべてのコストを考慮すれば風力や太陽光発電は発電コストが高く、再エネ発電への転換は経済的、環境的にも成立しないことが判明している。

    メガソーラーについては、風光明媚な自然を破壊したり、古墳を囲うような形で多数のパネルが設置したりする地域が出てきている。大雨や降雪、台風などの自然災害によって、パネルが崩落、飛散したりする人災を招き大きな社会問題となっており、無責任な行政や事業者の責任が問われなければならない。

    英国のBPは、23年前自らを 「Beyond Petroleum」と名乗り、「2020年には年間50億ドルを投じて再エネ由来の発電量を50GWに引き上げる一方、石油とガスの生産量を前年水準より40%縮小する」と約束していた。

    しかし、現在、BPは現実主義に転向し、10億ドルの洋上風力発電投資を帳消しにする一方で、現在のエネルギーシステムである石油とガスに投資し、同時にバイオ燃料や水素のような代替エネルギーにも資金を投入する」と発表した。

    BP lost $1b in wind power and just flipped from cutting oil by 40% to increasing it « JoNova (joannenova.com.au)

    昨年、BPは米国の洋上風力発電事業の価値を11億ドルも減損した。10月、BPの株主であるブルーベル・キャピタルはBPに対し、「石油・ガス事業を縮小して再エネ事業を拡大するという」計画への投資に停止を求めた。アブダビ、アンゴラ、米国などでの増産により、石油生産量は2027年まで年率2~3%増加すると想定しており、40%削減するというBPの約束は、石油とガスの生産量が昨年より2.6%増加したため、風前の灯となっている。

  2. ESG

    脱炭素対策についての企業の本気度を測る仕組みの一つとしてESG(環境・社会・企業統治)運動が展開されている。

    ESG投資について、経産省のサイトでは、

    機関投資家を中心に、企業経営の持続可能性を評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、SDGsと合わせて注目されている。日本においても、国連責任投資原則に日本の年金積立金管理運用独立行政法人が2015年に署名したことを受け、ESG投資が広がっている

    と説明している。

    「我が国でもESG投資が広がっている」と書かれているが、米国などではかなり事情は違っているようだ。

    2月15日、世界最大の資産運用会社であるブラックロック、米国最大の銀行であるJPモルガン・チェース、世界第3位の資産運用会社であるステート・ストリートは、「企業は受託者責任に関心を持つべきであり、ESGカルテルに参加すべきではない」などという理由で、クライメート・アクション100+からの撤退を発表した。

    この投資クラブは、「世界最大の温室効果ガス排出企業が気候変動に対して必要な行動をとることの保証」を誓約している。ウォール街の大手企業3社が最も著名な気候活動クラブの1つから撤退したことで、環境・社会・企業統治(ESG)運動が大きな後退を余儀なくされた。

    Climate Action 100+

    地球温暖化対策の提唱者たちは、国連や世界経済フォーラムなどの世界的組織が掲げる「ネット・ゼロ目標」と世界で最も強力な金融機関を連携させるための重要なプレーヤーとして、この投資クラブを称賛してきた。

    ピーク時には68兆ドルの資産を保有する700の投資家会員を誇っていたが、今週の脱退により、その資産が約16兆ドル減ることになった。我が国でもてはやされている感のあるESG投資にも暗雲が漂ってきているのではないだろうか。

  3. おわりに

    国連や世界経済フォーラムなどの国際機関が主導する脱炭素運動について、象徴的な対策・手段と考えられるEV、再生可能エネルギー発電について、欧米の現状を眺めながら我が国の動きを振り返った。

    欧米では、この運動を加速させるためにESG制度を導入し、企業の本気度を測定したうえで融資の判断材料にするなどが行われてきた。温暖化CO2元凶論やESGによる企業評価も机上のシミュレーションによるものであり、現実を蔑ろにしていることが多い。

    通信簿ということでまとめると、「事実は小説よりも奇なり」、つまり、作られた小説よりも実際の世界の方が不思議でダイナミックなことが多いので、国連をはじめとする国際機関やEUなどは、体面を保つ努力をしつつ「前言を翻す」ことを繰り返しながら、早晩内部崩壊していくのではないだろうか?

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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