ウクライナがクルスク侵攻という合理性が不明な作戦を始めてから、ロシア・ウクライナ戦争が、大きく動き始めた。東部戦線でロシアが急速な進軍を見せている。ウクライナ軍は防衛の形が取れてない危険な状態である。
私はクルスク侵攻は、戦争を継続させる、ということ自体を目的にしただけの行動であり、本来のウクライナを防衛する、という目的にてらして、合理性を欠いている、と書いてきた。
今やはっきりと、ロシア領のほぼ無人の一部領域の占領を死守するために、ドネツクなどにおける領土を、ウクライナがロシアに明け渡している状況が、明らかになってきている。
しかしゼレンスキー大統領は、覚悟を定めているようである。戦線の膠着によって停戦の機運が高まったので、その停戦の機運に抵抗する行動をとった。その結果として、ウクライナに損失がもたらされている。しかし、戦争を続けるためには、それしか方法がなかったのだ、と言わんばかりの態度で、損失を甘受しようとする姿勢である。
このウクライナの行動の非合理性の理由は、以下のように洞察せざるを得ない。
第一に、「ウクライナは勝たなければならない」の呪縛に陥り、勝利なき終戦を迎えることを忌避することが、政治指導者の判断の中で、目的化されている。そのため、損失を出し続けても、とにかく停戦を先送りにして戦争を継続し続けることを優先して、目的にしてしまっている。