シュタインマイヤー大統領は、「イスラム教もドイツの社会の一部だ」と述べ、イスラム教徒の国民に対してエールを送っている。また、フランクフルト市のナルゲス・エカンダリ=グリュンベルク市長は、「市民の一体感のしるし」としてハッピー・ラマダンを歓迎している1人だ。その一方、中東・北アフリカからのイスラム系難民・移民の殺到に対し、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は反移民、外国人排斥をモットーに急速に躍進し、ドイツ連邦議会で第2野党だ。路上インタビューと電話回答で「ハッピー・ラマダン」への評価が違う。

参考までに、野党第一党の「キリスト教民主同盟」(CDU)の議員は、「市の税金を使ってラマダンを祝うことは、社会の統合を促進するのではなく、分裂させることだ」と批判している。

ちなみに、ドイツでイスラム過激テロ事件といえば、2016年12月にベルリンのクリスマス・マーケットに大型トラックが突入し12人が死亡、53人が重軽傷を負ったテロ事件が発生した。それ以後、ドイツでは同様の大規模なテロ事件は起きていない(「大型トラックが無差別テロの武器」2016年12月21日参考)。

ドイツの最大宗教、ローマ・カトリック教会のドイツ司教協議会のゲオルク・ベツィング議長は9日、カトリック司教と信者を代表してイスラム教徒の断食月であるラマダンに祝福を送り、「あらゆる違いに関係なく、私たちが断食、祈り、施しをする際に同時に神の恵みを求めることは美しいことだ」と述べている。

今年の「ラマダン」とキリスト教の「四旬節」は重なる。四旬節は「40日の期間」という意味だ。イエスが荒れ野で40日間断食をしたことに由来していて、それにならって40日の断食という習慣が生まれた。けれども実際には、復活祭の46日前の水曜日(灰の水曜日)から四旬節が始まる(カトリック中央協議会)。すなわち、イスラム教徒がラマダンの期間中、約1カ月間断食し、キリスト教徒はそれに先立ち、四旬節として断食の時を持ち、今月31日、キリスト教最大の祝日である復活祭(イースター)を迎える。キリスト教とイスラム教で断食期間が重なるわけだ。

最後に、世界のイスラム教徒に“ハッピー・ラマダン”。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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