世界のイスラム圏でラマダン(断食月)が始まった11日、ドイツ民間ニュース専門局ntvを観ていたら興味深いニュースが放映されていた。ドイツのフランクフルトやケルンで繁華街の通路に「ハッピー・ラマダン」と書かれたイルミネーションが点灯されているのだ。「ハッピー・イースター」や「メリー・クリスマス」といった表現は目にしてきたが「ハッピー・ラマダン」という呼び方は当方には初めてだったので、新鮮な響きがした。
ラマダンはイスラム教徒の聖なる義務、5行(信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼)の一つだ。幼児、妊婦や病人以外は参加する。ラマダンの1カ月間は日の出から日の入りまで身を慎み、断食し、奉仕する。日が沈めば、友人や親戚関係者と一緒に断食明けの食事(Iftar、イフタール)をとる。
太陽が沈み、薄く暗くなり「ハッピー・ラマダン」という点灯が浮かび上がると、市民から「ワー」といった歓声が沸いた。そして歩いている市民に感想を聞いている。ある男性は「キリスト信者がクリスマスを祝うように、イスラム教徒がラマダンを祝っても当然だ」という。若女性は「フランクフルトはオープンな都市だ。その意味でハッピー・ラマダンはそのシンボルだ」と答えていた。ハッピー・ラマダンは4月9日まで点灯されるという。
興味深いことは、ntvが視聴者に電話で緊急質問した結果、ハッピー・ラマダンの点灯に賛成は7%で、反対は93%だったことだ。路上でインタビューした市民の声は相対的に賛成派だったが、電話インタビューの結果は逆に圧倒的に反対が多かった。
ドイツには約350万人のイスラム教徒が住んでいる。そのうち250万人以上はトルコ系だ。だから、ドイツでイスラム問題と言えば、トルコ問題というわけだ。2030年にはドイツのイスラム教徒の人口は現在の2倍以上に増えて、700万人に膨れ上がり、人口に占める比率は、現在の4%から8%に急上昇するという予測が出ている。
「ハッピー・ラマダン」が点灯したフランクフルト市では約15%がイスラム教徒だ。ドイツではカトリック教会とプロテスタントがほぼ半々だが、両教会を合わせても50%以下だ。すなわち、キリスト教会はドイツではもはや独占的な宗教ではなくなった。キリスト教会は、聖職者の未成年者への性的虐待事件や不正財政問題の影響もあって年々教会から脱会する信者が増えている。