そこで自分が独立した際に当時の監査人だったKPMGを切り、日系の小さな会計事務所に移しました。会計費用は3分の1になります。その頃、カナダ大手銀行から莫大なる借入金があったため、決算ごとに会計監査書が要求されました。日系の会計事務所がそれを作成、銀行に提出したところ、担当者から「ひろ、この監査人は誰だ?もっと名の知れた信用のある会社はいないのか?」と言われたのは今でもよく覚えています。いみじくも日経の「監査法人、膨らむ業務と減る報酬 『保証はコスト』の壁」という記事に「我々(=日本の監査法人)はコストなのだと再認識した。第三者による保証料ととらえる米企業と違う(大手パートナー)」とあるのですが、まさにこれなのです。つまり日系の小さな会計事務所では北米スタンダードでは「保証料にならない」ということです。
先述の保険の話で保険代理店を一度も変えたことがないと申し上げました。理由はもう一つあるのです。いざ、事故が起きた時、代理店の能力次第で保険金の支払いなどは大きく変わることもあるのです。私がお付き合いしているのは大手代理店の建設保険部で当然、そこには情報も集まっているし、保険請求も数多く生じているのです。その為にクライアントとアンダーライターをよりスムーズにする仕組みがあるのです。保険料をケチってネット保険とか、街中の小さな保険屋ですと多額の保険クレームの際に対応できないのです。私は過去、2度ほど保険の巨額請求があったのですが、助けられました。
くだんの日経の記事はクライアントと士業側の意思と期待のずれがポイントです。私もずれまくりでした。会計士の話はもう一つあります。日系のその会計士がカナダの中堅会計事務所に合流しました。毎年の会計コストは2倍以上に急上昇します。顧客の私からすると「何が変わったのだ?」であります。一方会計事務所もより細かい社内プロセスを経る必要があり、驚くほど年度決算に時間がかかるのです。私のように9月決算でも2.5カ月かかり、納税に間に合わないときはとりあえず金額を提示され、これを払っておけ、というわけです。これには怒り心頭。結局そこもおさらばし、今のオタク系カナダ人経営の会計事務所に依頼しています。早い、安い、税務アドバイスがうまいの三拍子そろって費用は以前の半分以下です。
大手上場会社が上場を止めたくなる理由の一つはその上場維持コスト。そしてそれは人に見せる数字故に余計なコストをかけざるを得ないとも言えます。それが吸収できるならよいですが、新興企業にとってそれは莫大で経営の足かせにすらなりえるとも言えると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月21日の記事より転載させていただきました。
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