- 労働時間あたりGDPの実質値
OECDの統計データでは、労働時間あたりGDPの購買力平価換算値について実質値も公表されています。実質成長率ではなく、長期の実質値の比較にはあまり意味はないと思いますが、念のため眺めてみましょう。
図3が労働時間あたりGDPの実質 購買力平価換算の推移です。
これはどういうデータかと言うと、各国の自国通貨ベースの実質値(2015年基準)を、2015年の購買力平価で各年ドル換算したものになります。
2015年の各国の物価を固定し、2015年の購買力平価でドル換算している事になります。2015年で名目の購買力平価換算値と一致します。
日本は実質でもかなり低い水準で推移しています。
図4は実質値の2022年の比較です。
日本は48.0ドルで、OECD36か国中20位、G7中最下位で、OECD平均値54.2ドルを下回ります。 ただし、他の主要先進国との差はかなり縮まっているようにも見えます。
ただし、最新の2022年を基準とした実質値を計算してみる事を想像してみましょう。
2022年の実質値=名目値で、図2の状態となります。
このように、実質値は基準値を変えながら、常に名目値に影響されながら更新されていく事に注意が必要ですね。
- 労働時間あたりGDPの特徴
今回は各国の労働時間あたりGDPの水準について比較してみました。
各国間の物価を揃えたうえで数量的な規模を金額で表現する購買力平価換算では、日本は他の主要先進国に比べてかなり低い水準が続いていた事になります。
近年ではその差が大きく開いてきていますね。ただし、物価を加味した実質値では同じくらいの成長率で推移しているような状況です。これは前回、名目成長率は低くても、実質成長率では他国と遜色のないレベルである事と符合します。
つまり、実質の生産性の水準としては低いながらも、ある程度相応の成長率は維持していて、比率が開かない程度では成長できているという事が言えそうですね。
逆に言えば、数量的には同じくらいで成長しているが、それを付加価値に結び付けられていない事も窺えます。
今後、様々な面で環境が変化していく事が予想される中、生産性がどのように変化していくのか大変興味深いところですね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?