モノホイール型ロボット「リングボット」は2本の足でバランスを取る

内側に足付きモジュールを組み込んだモノホイール型ロボット「リングボット」
内側に足付きモジュールを組み込んだモノホイール型ロボット「リングボット」 / Credit:Joohyung Kim(UIUC)_A monocycle robot with two legs(2024)

今回開発されたリングボットは、直径515mmの車輪と、内側に組み込まれた2つのモジュールで成り立っています。

モジュールは小さな歯車を介して、車輪のリム(外縁部にあって車輪の全体的な形状を支えるための硬い性質を持った円環)と嚙み合っており、モジュールが歯車を回転させることで車輪も回転し、前進します。

研究チームは、この構造を「回し車を走る2匹のハムスターのようだ」と述べています。

2つのモジュールがまるでハムスターのように外側の車輪を回転させるというわけですね。

足でバランスをとりながら移動できる
足でバランスをとりながら移動できる / Credit:KIMLAB (Kinetic Intelligent Machine LAB)(YouTube)_Ringbot: Monocycle Robot with Legs(2024)

これだけであれば、前進するだけのモノホイールです。

しかし、リングボットでは、2つのモジュールに足(ロボットアーム)が1本ずつ備わっており、様々な役割を果たすことができます。

例えば、走行時には両足を左右に伸ばしてバランスを取ります。

そして曲がる時には、片方の足だけを伸ばして重心を移動させることができます。

器用に方向転換もできる
器用に方向転換もできる / Credit:KIMLAB (Kinetic Intelligent Machine LAB)(YouTube)_Ringbot: Monocycle Robot with Legs(2024)

また停止時には両足を地面につけて倒れないようにし、その場で足だけを使って方向転換することも可能。

さらに完全に倒れた状態から2本の足を使って車体を起こすこともできるようです。

器用に足を動かしている映像を見ると、それぞれのモジュールに意思があるかのようですね。

2本の足で起き上がることも可能
2本の足で起き上がることも可能 / Credit:KIMLAB (Kinetic Intelligent Machine LAB)(YouTube)_Ringbot: Monocycle Robot with Legs(2024)

ちなみに、これまでに行われたテストでは、リングボットは人間のオペレーターによって遠隔操作され、最高速度5km/hで走りました。

研究チームは、将来的にはこのリングボットにカメラやセンサー、GPSなどを取り付けたいと考えているようです。

そのように進化したリングボットであれば、混雑した市街地を自律的に走り抜けるなど、配達業務での使用が可能かもしれません。

様々な場面に適応できるリングボット。配達ロボットとして活躍するかも
様々な場面に適応できるリングボット。配達ロボットとして活躍するかも / Credit:Joohyung Kim(UIUC)_A monocycle robot with two legs(2024)

キム・ジュヒョン氏も、「大都市では、狭い場所でも移動できる自転車やバイクが交通渋滞を躱しており、配送ニーズを満たしています」と語っており、将来、リングボットがその代わりを担う可能性があると考えています。

このように、現代ではSF作品にインスピレーションを受けた技術がどんどん実現しています。

「SF作品と現実の境目が曖昧になっている」のかもしれませんね。

参考文献

Star-Wars-inspired robot rolls on a round body and uses legs to steer

A monocycle robot with two legs

元論文

Ringbot: Monocycle Robot With Legs

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。