2023年もあと1日で新年を迎える。1年前の2022年12月31日、ローマ・カトリック教会の名誉教皇ベネディクト16世が95歳で死去した。世界のカトリック教会にとって、サンピエトロ広場で挙行されたベネディクト16世の葬儀式典(1月5日)で新年が始まったわけだ。
先輩の教皇を失ったフランシスコ教皇はその後、文字通り、1人教皇として教会の刷新(世界シノドス)に乗り出してきた。バチカン教皇庁のフェルナンデス教理省長官は今月18日、「同性カップルもカトリック教会で祝福を受けることができる」と表明したばかりだ(「バチカン、「同性カップルにも神の祝福?」2023年12月20日参考)。
世界は2019年秋から3年間余り、中国武漢発の新型コロナウイルス(Covid-19)のパンデミックで死闘を繰り返した。ワクチンが作られ、2022年に入ると、その脅威は次第に消滅していった。
ドイツの著名なウイルス学者クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)は2022年12月26日、独日刊紙ターゲスシュピーゲルとのインタビューで、新型コロナウイルスの収束を予測したが、幸い教授の予測は当たった(2023年9月3日現在で世界で約690万人が感染症で亡くなった)。
「民族の火薬庫」と恐れられてきたバルカン半島で2023年もセルビアとコソボの間で小規模だが小競り合いが生じたが、大火とはならずに済んだ。同じ、バルカン半島だが、クロアチアは2023年1月1日を期して欧州の単一通貨ユーロ加盟国に入り、欧州域内の自由な移動を認めたシェンゲン協定にも正式に加盟した。
目をアジアに移すと、中国共産党政権は台湾再統一をめざし、核兵器を含め着実に軍事力を強化。一方、北朝鮮は11月28日、軍事偵察衛星「万里鏡1号」の打ち上げに成功した。韓国の情報機関・国家情報院(国情院)はロシア側の技術的支援があったと推測している。
参考までに、北朝鮮の5機の小型無人機が2022年12月26日、韓国領空に侵入したというニュースが流れた。北朝鮮問題といえば、核トライアド(大陸間弾道ミサイル、弾道ミサイル搭載潜水艦、巡航ミサイル搭載戦略爆撃機の3つの核兵器)が主要テーマだったが、無人機が加わることで、北の軍事力、日韓への攻撃力は飛躍的に拡大する。日本にとって、北の脅威が一層高まった1年だった。
2023年は「戦争の1年」となった。ロシア軍が2022年2月24日にウクライナに侵攻し、キーウ政府の「非武装化、非ナチス化」を標榜して戦闘を展開、それに対し、ウクライナのゼレンスキー政権は祖国防衛のために国民を鼓舞する一方、欧米諸国からの武器の供与を要請し、軍事大国と激しい戦闘を繰り返してきた。ウクライナ軍の反転攻撃に大きな成果はなく、戦闘は長期化し、ロシアとウクライナ両国にとって消耗戦の様相を深めてきたが、停戦・和平の見通しはない。