ローマ・カトリック教会最高指導者フランシスコ教皇はウクライナに対し、「白旗」を掲げてロシアと戦争の終結を交渉する勇気を持つよう呼び掛けた。フランシスコ教皇がスイス公共放送局RSIとのインタビューで発言した。同インタビューは文化番組の一環としは今月20日に放送される予定だ。教皇の発言の一部が9日、公表された。
ウクライナ戦争では、「ウクライナはロシア軍を撃退できないので諦めるべきだ」と主張する人々と、「勝利するまで戦うべきだ」と檄を飛ばす声で議論が分かれているが、フランシスコ教皇はどちらの意見を支持するかという質問に対し、「状況を見つめ、国民のことを考え、白旗の勇気を持って交渉する人が最も強いと思う」と述べ、「国際社会の協力を得て交渉が行われるべきだ」と付け加えた。
同教皇は、「交渉という言葉は勇気のある言葉です。自分が敗北し、物事がうまくいっていないと分かった時は、交渉する勇気を持たなければならない。事態がさらに悪化する前に、恥ずかしがらずに交渉してください」と語っている。
フランシスコ教皇は2月中旬に行われたインタビューの中で、ウクライナやロシアといった国名を呼んではいないが、発言の流れから「白旗を掲げる」ように求めている国は明らかにウクライナに対してだ。だから、ドイツ通信(DPA)はリード文の中で「ロシアを喜ばし、ウクライナを怒らす内容だ」と報じているほどだ。
フランシスコ教皇の発言について、ウクライナのゼレンスキー大統領はどのように答えるだろうか。これまで教皇の発言に対するウクライナ側の反応は報じられていないので断言できないが、プーチン大統領との如何なる交渉も応じないと主張してきたゼレンスキー大統領がフランシスコ教皇の発言をプーチン大統領を擁護するもの、と受け取ったとしても不思議ではない。
「白旗を掲げる」とは戦場では降伏を意味する。ボクシングで自分側の選手が相手に連打され、もはや反撃は難しいと判断したトレーナーがリングにタオルを投げて試合をストップさせるのと同じ意味だろう。ウクライナ側が白旗を掲げれば、ロシア軍がこれまで不法に占領してきた領土を奪い返すチャンスを失うと共に、ロシア側の更なる要求に譲歩を強いられることになる。ロシア軍のウクライナ侵攻を自由民主国家と独裁専制国家との対立と受け取っているゼレンスキー大統領にとって、ロシア軍の不法な軍事活動に褒章を与えるような「白旗」を掲げることは甘受できないはずだ。
ちなみに、フランシスコ教皇の「白旗を掲げる」という表現がウクライナ側に誤解されることを恐れたのか、バチカン教皇庁側は「戦闘を停止し、交渉することを意味する」とわざわざ説明している。もし、そのような意味ならば、「白旗を掲げる」という表現は使わない。