松井市長は、京都大学法学部卒業後、30年以上にわたり、労働省=厚生労働省畑でキャリア官僚として霞が関で役職を歴任した。2011年から広島市長を務めている71歳である。東大法学部・経済産業省出身の湯崎英彦・広島県知事(2009年就任)と同様に、地元広島には高校まで在籍したが、大学からは東京で居住してキャリアを形成した人物だ。
松井市長も湯崎県知事も、現在首相の岸田文雄氏が広島1区の自民党の衆議院議員としなった後、自民党の広島県支部連合会長となったことによって生まれた首長だ。岸田氏が広島出身の中央官庁キャリア官僚を洗い出して口説いた結果、広島の自治体の長になった人物たちだからだ。
松井市長の場合には、革新系政党の支持を得ていた人物であった前任者の秋葉忠利氏の引退時に、自民党が背水の陣で安定感のある候補を選ぼうとする過程で、岸田氏に口説かれて広島市長になった。2006年当時の記事を見ると、次のような記述があり、興味深い。
広島1区の岸田代議士が秋葉広島市長に挑戦か
来春(筆者注:2007年市長選のことで結局これは自民党が有力候補を立てられず秋葉氏が三選)の広島市長選で自民党衆院議員広島1区選出の岸田文雄氏を擁立する動きが本格化しそうだ。地元では経済界など保守層の間で革新系現職の秋葉忠利氏に勝てる候補への待望論が根強い。少ない残り時間や地元での知名度から「岸田氏しかいない」という見方が急速に強まっている。二世議員の岸田氏は当選5回の49歳。早大卒後、旧日本長期信用銀行に入り、衆院議員だった父の死後、後を継いだ。ハンサムな容貌と若さから、地元では「全国区の人気者になる」と期待されていた。当選を重ねて安定感は出たが、永田町では「その他大勢」の中に埋没したままで存在感がない。閣僚経験も副大臣止まりで、「中央では先が見えた」との声もある。一方、現職の秋葉氏は、社民党の元エース。63歳。数学者として米国の大学で教鞭を執り、CNNの番組でキャスター経験もあるなどの国際派。・・・