だがいずれにせよ、これは一つの冷静な現実の観察の結果ではあるだろう。ロシア・ウクライナ戦争で、国連は蚊帳の外に置かれている。

それでは他の国際機関には何か特別な役割が期待されているか。ドンバス戦争の際には、OSCE(欧州安全保障協力機構)の関与が求められた。ウクライナもロシアも、その他の関心を持つ主要国も、全て加入しているのが、OSCEだからだ。

しかしドンバス戦争の調停の結果であった「ミンスク合意」が崩壊し、ロシアによるウクライナ全面侵攻を開始してOSCEの監視団が撤退したときから、OSCEは蚊帳の外の存在となった。特にウクライナの人々の間でのOSCEに対する不信感は根深い。ロシア・ウクライナ戦争の文脈でOSCEが言及される機会は全くなくなってしまい、代わってウクライナ政府によってNATOとEUへの期待が強く表明されるようになった。

しかしウクライナにとってNATOやEUへの期待は、自国を支援する諸国のグループへの期待である。必ずしも調停の期待ではない。したがってロシアにとっては、NATOやEUは敵側の勢力である。将来にわたって、ロシアはこれらの地域機構が主導する調停を信用しないだろう。

だが、そうなると国際機関(地域機構)の中には、ロシア・ウクライナ戦争の調停にあたることができる候補が存在していないことになる。国連とともに「黒海穀物イニシアチブ」合意の調停にあたったトルコは、引き続き重要な国だ。ロシアとウクライナの双方に対して比較的良好な外交関係を維持している。しかし調停者としてのトルコへの期待は、しぼんでいる。エルドアン大統領が、ロシア・ウクライナ戦争や黒海情勢について発言する機会も、目に見えて減ってきているように思われる。

ウクライナは、第二回「平和サミット」を開催して、できる限り自国の意向にそった停戦の枠組みを国際的に確立していきたいと考えている。そのため、仮にウクライナを支援している国でなくても、「平和サミット」共同宣言の署名国でなければ、調停者としての役割を与えることにも反対だ、という態度である。