驚いたのは私がこの事業をやるのにふさわしい人材かという第三者の推薦状を3人分用意する際、知り合いのカナダ人にお願いしたものの「何を書いていいかわからない」「ひな形は無いのか?」といわれながらも提出したら落とされたのです。「え?」ですよね。理由は書面の内容が「期待と違う!」マジか!?でした。また出し直してようやくOKです。

禅問答のような対応マニュアル要求もあります。担当者曰く「地域全体が天変地異で居住できなくなった時、運営者として居住者にどう対応するか?この答えを示せ」といわれしばし考えました。「そんなのは天変地異の内容と規模次第であって答えは一つじゃない!」という結論のもと、州や国が出す緊急避難指示に従い、居住者を最善の形で避難させる。家族や友人がいる人にはそれらの方々にクライアントを託し、残った方々の安全安心を確保する、で出したらOKでした。

この事業を一緒に行う私のパートナーが専門家の中でも本当に優れ者で私と共に情熱の塊なのでここまで来れましたが、普通のマインドではあまりにもハードルが高すぎる事案だったと思います。つまり、たまたまデベをやっている私と介護/看護のプロが組み、人材確保も出来ているからこそここまで来たのかもしれません。その点からは日系の介護施設が北米全般で今後できる可能性は残念ながら相当高いハードルだと言わざるを得ません。

ところがメッカである日本も事業が難航しそうな気配が出てきています。それはやはり人材不足。日本の介護職従事者はざっくり200万人で既にピークを打ち、減少期に入っています。ところが高齢化のため、2040年には280万人と今より4割も多くの介護従事者が必要なのです。要件を満たせない介護施設は経営を止めるしかありません。また、大手による寡占化が進むこともあるでしょう。外国人の介護士さんが増えることもあり得ますが、個人的には外国人が日本にきて日本語検定を受けてまでして介護士になりたいと思う動機が十分にあるのかも疑問です。今後10年の日本が国際的にどのような地位にあるか次第だろうと考えています。

結局、日本だろうが、北米だろうが、介護施設は選択肢の一つに留まり、今後、自宅で家族と共に過ごす選択肢が中心になってくる気がします。その点からすれば、我々いい歳になった者はいかに健康的な生活に勤め、お世話になる期間を縮められるかが重要になってくるのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年12月3日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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