この少数意見は極めて真っ当だと思う。昨年8月の安倍暗殺事件と今般の政治資金不記載問題で、官憲のリークを連日センセーショナルに報じる各種メディアとそれに激しく反応する世論に阿諛追従して、拙速に一定の閣僚らを更迭した岸田総理には、この判事の「有罪判決がない限り・・」との一節がどう響くだろうか。
大内記事の本件の「事実」に関する欠陥箇所は概ね以上だ。が、この記者の主観を交えた次の一文は、左派のメインストリームメディアがトランプ発言を伝える時の常套句をそのまま翻訳しているに過ぎず、左巻メディアがそう伝えているという事実を報じる記事なら良いとしても、この判決を伝える記事には全くの蛇足だ。
トランプ氏は2020年の前回選での落選後、「大規模な不正があった」と根拠のない主張を展開。これを信じた支持者たちが21年1月、民主党のバイデン候補(当時)の当選確定手続きを妨害するため、首都ワシントンの連邦議会議事堂を襲撃する事件を起こした。
何故なら、トランプが主張する「不正があった」が本当に「根拠がない」のかどうか、議事堂に行進した者の一部が乱入したのは事実だが、それが「トランプの主張を信じた」からか、それとも自ら得た情報に基づくものだったのか、そして乱入者が「支持者たち」だけだったのか、それとも反トランプ派や官憲の囮が混じっていたのかなどを、新聞は、今後の裁判で全容が明らかになるまでは一方的に報じるべきではないからだ。悪名高い「共同通信」を真似る必要はないし、このスペースを使えば前述した「事実」の抜けを幾つか書ける。
「産経」の米国特派員といえば、反トランプ論調の多かった黒瀬悦成が編集長兼外信部次長に栄転し直に欧州に出たと思ったら、後継の大内清までがこの有様では大先輩のワシントン駐在編集特別委員兼論説委員古森義久と同様に、長年産経一筋の筆者も泣けてくる。どうせ現地メディアを引き写すならポイントを外すな、といいたい。
最後に、20年大統領選コロラド州のバイデンとトランプの得票数を州都デンバーと郊外部に分けて以下に記しておく。数字を見ると、都市部でトランプが如何に不人気か知れる。前述のラマスワミは「X」にこうも書いている。
エスタブリッシュメントは党派を超えてトランプ紙を大統領選挙に出馬させないためにあらゆる手を尽くしたが、今度はトランプ紙を再び大統領にさせないために、憲法修正第14条という新たな戦術を展開しようとしている。
都市部のエスタブリッシュメントに反トランプ派が多いのは全米ほぼ共通の傾向で、今後、トランプの裁判が予定されるニューヨーク市やワシントンD.C.ではとりわけ顕著だ。しかも陪審員裁判となれば、トランプが裁判の管轄地に拘るのも宜なるかな。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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