従い、これらの「bloodbath」が、米国の読者に「血の海」とか「流血の惨事」とかと読まれなければニュース価値がない。即ち、オハイオ州が自動車産業のメッカであり、その地で「大量失業」が起こるというニュアンスを消すことで左派メディアはトランプを非難した、と「Newsmax」は言いたい訳だから。
ではトランプは何といっているかといえば、「Newsmax」にはこうある。
― The former president seized on the media’s spin doctoring in a pair of Truth Social posts Monday, sharing the liberal networks claiming the former president was referring to civil blood spilling as opposed to the economic definition of the term “bloodbath” – and how the same liberals in the media used that term all the same.
前大統領は月曜日のTruth Socialの2つの投稿で、メディアのspin doctoringについて、前大統領が使った「bloodbath」という語の経済的な定義に反して、市民の流血に言及したとリベラル派の共有ネットワークが主張していること、そしてメディアの同じリベラル派がこの言葉を同じように使っていることを取り上げた。(拙訳)―
ここに「spin doctoring」という熟語で「spin」が出て来る。「spin」には「言葉を偏って解釈する(させる)こと」という意味があるので、「spin doctoring」は「言葉を誤って使うことで情報を操作する」となる。これならトランプが言いたいことが理解できるが、自動翻訳の実力はそこまでに至っていない。
「Foxニュース」の元キャスターで保守派のビル・オライリーは、「No Spin News」と題する番組でこのトランプのオハイオ演説を取り上げ、こうした情報操作をしている左派メディアを列挙し、演説の趣旨を曲解しているナンシー・ペロシや前ホワイトハウス報道官ジェン・サキらを批判しています。
「optics」トランプが目下4通の訴訟を抱えていることは日本でも広く報じられている。その訴訟の一つに、20年1月初めにトランプがジョージアの州務長官に「11780票を探しだせ」と電話で脅迫したとの訴訟がある。経緯は別の拙稿をお読み願うとして、この事件が最近思わぬ方向に展開している。
事件を起訴したジョージア州地方検事(黒人女性のウィリス)が、愛人(黒人男性のウェイド)を70万ドル近い高給で州の特別検察官に雇い、二人で何度も大名旅行していたことをトランプの弁護士がすっぱ抜いたのだ。公聴会に呼ばれた二人は、愛人関係は認めたものの、それは雇った後のことと弁明した。
が、ウィリスの元同僚らが二人の関係は前からだったと証言し、ウェイドのスマホからも雇用前から30数回も深夜にウィリス宅周辺に行った記録や、4桁に上る通話やメールの記録が出て来た。それでも二人は雇用後だと言い張り、ウィリスは、ウェイドがカードで支払った旅行代金の応分は現金で彼に渡したとし、公聴会は黒人の我々を人種差別していると開き直った。
検事が関係者を雇って経済的便宜を与え、その人物から利益供与を受ければ、利益相反で刑事罰すら受ける可能性がある。これを審議したマカフィー判事は、証拠が弱いと利益相反を否定しながらも疑いが濃いとして、ウィリスが訴訟を降りるかあるいはウェイドを解雇するなら、担当を継続できると判じた。
結局、ウェイドが身を引いたが、この判決についてトランプ支持派は、ウィリスを降ろさないというマカフィーを「ナンセンス」だと非難しつつ、二人の「bad optics」な関係が明らかになったと評した。この「optics」は単数扱いで「(人物の行動などに対する)大衆の見方、世論」という意味だ。つまり「世間体(てい)が悪い」ということだろう。
トランプやジュリアーニら、このRICO訴訟の被告6人の弁護士は18日(現地時間)、ウィリスに訴訟を継続させるとしたマカフィー判事の判決に対する控訴書類をジョージア州控訴裁判所に提出した。書類は、ウェイドの辞任だけでは同判事が認定した不当行為を正すには十分ではないとしている。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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