顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久

アメリカのドナルド・トランプ前大統領に対するニューヨーク地裁での有罪評決が共和党全体の連帯を強め、これまでトランプ氏への留保をみせていた党内の勢力をトランプ氏支持の下に団結させる効果が明白となった。

このままだと11月の大統領選と同時に実施される連邦議会選挙で僅差の議席の上院では共和党がこの勢いに乗って、民主党に逆転勝して、多数派となる展望までが語られるようになった。共和党側はこぞって今回の評決を民主党側によるトランプ氏の選挙を妨害する政治的な工作だと非難するのである。

ニューヨーク州のマンハッタン地区の地方裁判所は5月30日、トランプ氏に対する合計34項目の起訴罪状について、陪審員12人による「そのすべてを重罪として有罪とする」という全員一致の評決を発表した。

この評決に対して共和党側ではトランプ氏自身の「民主党陣営による魔女狩り的な選挙妨害だ」とか「民主党側による司法機関の武器化的なトランプ陣営攻撃だ」という主張への同調や共鳴が噴出した。

その結果、共和党側全体をかつてないほど団結させるという現象が起きたのだが、この重大なうねりには日本の主要メディアでは正面からの光があまり当てられないようだ。これまで共和党内でトランプ氏に批判や反対を表明してきた有力政治家たちまでが今回の裁判の展開を激しく非難するのだった。

具体的な実例としては連邦議会上院の共和党院内総務ミッチ・マコーネル議員が同評決に対し「決して起きてはならない出来事で、控訴により逆転されるだろう」と述べた。同議員は同じ共和党内でも穏健派とされ、これまでトランプ氏との間に距離をおき、関係が冷却したとも評されていたが、今回は断固たるトランプ支持に踏みきったわけだ。