2024年8月28日配信の「日経グローカル」WEB記事で日本経済新聞編集委員の谷隆徳氏は「寄付企業がその自治体の事業を受注することを規制するかどうか」を論点の一つとして挙げつつ、「禁止すればすっきりするが、将来的な事業活動を制約するので、寄付額が落ち込むのは避けられない。ただし、寄付する際に使い道を細かく指定することは見直すべきではないか。」と指摘している(「福島県国見町にみる「企業版ふるさと納税」の課題」)。

例えば、スポーツ用品メーカーが「スポーツによる健康づくり」を求めることは許容範囲だろうが、自社が競争力をもつ特定のスポーツ用品の購入に使い道を制限した場合、寄付金の還流を期待していると誤解されかねない。(同氏)

本件の場合、上記寄附の目的は「災害・救急車両の研究開発・製造を通じた地域の防災力向上に向けた取り組みに関すること」と指定されていた。これを原資に救急車両の研究開発事業が組まれ、上記業者に発注されたというのであれば、結果論でいえば特定され過ぎていた、ということになる。

この問題を巡る事実関係は上記百条委員会報告書を参照頂きたいが、ここで自治体の契約問題を長く観察してきた立場として、以下の2点を指摘しておきたい。

第一に、自治体が事業を推進するとき、特に国肝いりの補助事業に見られるような、その自治体の規模に比して高額な事業を展開しようとするとき、特定の民間業者が「業務提携」と称してその企画段階から関与し、その支出の段階において、その業者あるいはその関連業者が契約の相手方なりその委託先となる(なろうとする)ケースは少なくない、ということだ。首長やその関係者に「売り込む」コンサルタントのような人物がお膳立てをして、具体化した段階でその仲間たちを引き連れてくるというケースも見聞きする。

もちろん、(手続きの公正さが担保されている限りでは)それ自体は行政としてもビジネスとしても許容されるべきことではある。住民の利益になるものであるならば、自治体も業者もwin-winの関係になるのであるから、これを否定する理由はない。ただ、企業版ふるさと納税制度の出口としてこのようなビジネス展開とリンクさせることが妥当かどうかは別問題である。